最新記事
代理出産

人助け? それとも貧困層からの搾取? 20兆円市場に成長した「代理出産」の光と影

SURROGACY UNDER SUSPICION

2025年12月17日(水)17時20分
ヘスス・メサ(政治担当)
代理出産禁止のイメージ画像

PHOTO ILLUSTRATION BY NEWSWEEK: DELMAINE DONSONONLY/GETTY IMAGES, ONLY_FABRIZIO/GETTY IMAGES

<国連は代理出産を「女性への暴力」として全面廃止を訴えているが...>

女性が自分の体を使う行為はどこまで許されるかについて、保守派の政策団体とフェミニスト団体の意見が一致することはめったにない。一方は伝統的な役割を擁護する傾向があり、他方は個人の選択と自由を主張する。

しかし、ある厄介な問題で両者は珍しく同じ結論に至っている──代理出産はやめるべきだ、と。

【動画】国連が代理出産をやめるべきだと主張する理由とは?


女性および少女への暴力に関する国連特別報告者のリーム・アルサレムは今年10月に、有償・無償を問わず、国内外すべての代理出産を完全に廃止するべきだとする報告書を提出した。

代理出産は女性への「複合的な暴力」であり、妊娠を契約労働におとしめ、女性の体を権力と資本のための「生産手段」にしていると、アルサレムは主張する。さらに、代理出産を売春や人身売買になぞらえて、たとえ本人の同意があっても、女性を商品化していると指摘する。

報告書では売春廃止論に基づく5段階の法的枠組みも提示している。具体的には、代理出産の依頼の犯罪化、第三者の利益取得の禁止、広告の禁止、啓発活動への資金投入、そして妊娠を担う女性には罰則ではなく支援を行うというものだ。

あくまでも「禁止」ではなく「廃止」を求めると、アルサレムは本誌に語った。「代理出産の契約は、女性から自分の身体や妊娠、健康をコントロールする権利を奪うものだ」。多くの女性は経済的困窮から契約を結ぶが、法的支援も、問題が起きた際の救済策もない。「代理母になると、彼女たちの健康と生命は後回しにされる」

最も被害を受けるのは生まれてくる子供だと、彼女は続ける。「彼らには全く発言権がない。同意も求められないままに生まれ、彼らの福祉も考慮されない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送-米ワーナー、パラマウントの買収案を拒否 ネト

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も

ビジネス

EU、炭素国境調整措置を強化へ 草案を正式発表

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中