人助け? それとも貧困層からの搾取? 20兆円市場に成長した「代理出産」の光と影
SURROGACY UNDER SUSPICION
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<国連は代理出産を「女性への暴力」として全面廃止を訴えているが...>
女性が自分の体を使う行為はどこまで許されるかについて、保守派の政策団体とフェミニスト団体の意見が一致することはめったにない。一方は伝統的な役割を擁護する傾向があり、他方は個人の選択と自由を主張する。
しかし、ある厄介な問題で両者は珍しく同じ結論に至っている──代理出産はやめるべきだ、と。
女性および少女への暴力に関する国連特別報告者のリーム・アルサレムは今年10月に、有償・無償を問わず、国内外すべての代理出産を完全に廃止するべきだとする報告書を提出した。
代理出産は女性への「複合的な暴力」であり、妊娠を契約労働におとしめ、女性の体を権力と資本のための「生産手段」にしていると、アルサレムは主張する。さらに、代理出産を売春や人身売買になぞらえて、たとえ本人の同意があっても、女性を商品化していると指摘する。
報告書では売春廃止論に基づく5段階の法的枠組みも提示している。具体的には、代理出産の依頼の犯罪化、第三者の利益取得の禁止、広告の禁止、啓発活動への資金投入、そして妊娠を担う女性には罰則ではなく支援を行うというものだ。
あくまでも「禁止」ではなく「廃止」を求めると、アルサレムは本誌に語った。「代理出産の契約は、女性から自分の身体や妊娠、健康をコントロールする権利を奪うものだ」。多くの女性は経済的困窮から契約を結ぶが、法的支援も、問題が起きた際の救済策もない。「代理母になると、彼女たちの健康と生命は後回しにされる」
最も被害を受けるのは生まれてくる子供だと、彼女は続ける。「彼らには全く発言権がない。同意も求められないままに生まれ、彼らの福祉も考慮されない」





