最新記事
韓国

韓国・李在明、国民の声に耳塞ぐ? 「執務室100m内集会禁止」の波紋

2025年12月16日(火)19時53分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
韓国大統領府「青瓦台」

李在明大統領が引っ越しを進めている韓国大統領府「青瓦台」 REUTERS/Kim Hong-Ji

<国民主権政府を標榜した大統領と与党の暴走が始まったのか──>

韓国国会でいま、与党・共に民主党が進める「集会及び示威に関する法律(集示法)」改正が火種になっている。焦点は、国会や裁判所といった重要施設の境界から100メートル以内の屋外集会・デモを原則禁止する規定に、禁止場所に「大統領執務室」も追加しようという点だ。

改正案はすでに国会の常任委員会(行政安全委員会)を経て、法制司法委員会も通過したと韓国日報、プレシアンなど韓国メディアが報じている。市民団体・参与連帯(PSPD)は、賛否を問う調査で「反対」を明確にした議員が19人にとどまり、与党内ではわずか1人だったと公表した。これを受けて、PSPDは「大統領執務室を集会禁止区域に定めるのは違憲・違法」として反対意見書を提出し、法案の本会議通過を止めるよう訴えている。

だが、なぜこのタイミングで「大統領執務室前100メートル」が争点になったのか。そこには、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権で行われた"大統領執務室の引っ越し"と、その周辺で続いた抗議デモの記憶が色濃く重なる。

「龍山の時代」が生んだ政治的風景

尹前大統領は選挙公約通りに2022年、象徴性の強い青瓦台を離れ、ソウルの龍山にある国防部庁舎へ大統領執務室機能を移した。以後、政権への賛否がぶつかる局面では、龍山の大統領執務室周辺が"政治の最前線"になり、集会・デモをめぐる警察対応や法的判断が繰り返し争点化してきた。

これを象徴するのが、2023年に裁判所が、龍山の大統領執務室近くでの集会に対する警察の「禁止通告」を取り消したという事例だ。判決は「国民の意思に耳を傾けることも、大統領が執務室で行う主要な業務だ」という趣旨を示したと報じられ、少なくとも"執務室の近く=直ちに全面禁止"ではないという判断が社会に刻まれた。

さらに、現行の集示法が定める「100メートル規制」そのものについても、違憲性がたびたび俎上に載っている。例えば憲法裁判所は、国会議長公館から100メートル以内の集会一律禁止を「憲法不合致」とし、法改正の期限を示したと伝えられている。


こうした流れの上に、禁止場所に大統領執務室も加えるという今回の改正案が現れたことで、「民主主義を後退させる改正ではないか」という反発が強まった。

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「NATO大半が対イラン作戦に不参加」、

ワールド

イラン交戦で新たに4500万人が飢餓の恐れ、WFP

ワールド

仏、敵対行為中は不参加 ホルムズ海峡護衛任務=大統

ワールド

ロシア、キューバへの「揺るぎない連帯」表明 内政干
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 5
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 6
    「目のやり場に困る...」グウィネス・パルトロウの「…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    生徒がいない間に...中学教師、教室でしていた「気持…
  • 10
    戦争反対から一変...湾岸諸国が望む「イランの脅威」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 8
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中