最新記事
日韓関係

就任直後から異例のサナエシフト?  韓国・李在明政権が急ぐ日韓接近の「裏事情」

2025年10月30日(木)19時25分
佐々木和義

高市政権の発足前、韓国では高市氏の首相就任を危惧する声が上がっていた。高市氏はそれまで歴史問題について謝罪の必要はないと述べ、竹島の日には堂々と閣僚を派遣すべきと主張。靖国神社にも参拝し、さらには「靖国神社参拝をやったりやらなかったりするから相手が調子に乗る」と述べるなど、韓国世論を逆なでする言動を繰り返してきた。

ところが高市氏は自民党総裁に選出されると、靖国神社・秋の例大祭への参拝を見送った。また首相就任後の会見で韓国メディア朝鮮日報のソン・ホチョル記者からの日韓関係についての質問に対し「日韓関係はこれまで両国の政権により築かれてきた。この基盤に基づき未来志向で安定的に発展させたい」と述べ、「韓国のりは大好きで韓国コスメも使っている。韓国ドラマも見ている」と付け加えた。

こうした発言を受けて高市政権が強硬姿勢に舵を切る可能性は捨てきれないという警戒の声がある一方、首相在任中は韓国を逆なでする言動は行わないだろうという意見もある。

高市首相のロールモデルは李在明大統領?

まさにその好例といえるのが李在明大統領だ。韓国で日本製品不買運動が広がった2019年、京畿道知事だった李在明は反日を扇動し、大統領選でも反日発言を繰り返したが、大統領就任と同時に日本との友好に舵を切っている。

文在寅政権時、大幅な黒字を計上していた対中貿易は赤字に転落、韓国経済に深刻な影響を与えたコロナ禍以降、国民の嫌中感情が悪化している。さらに同盟国である米国では大統領に突然貿易関税を突きつけてくるトランプ氏が返り咲いた。そんななか、日韓の民間交流は過去に例を見ないほど活発化しており、李政権はその時流に乗ることを選択した。

こうした動きに対して、韓国側では賛成反対、両方の反応が出ている。慰安婦支援を標榜する正義記憶連帯は「(高市氏は)過去の日本による違法な朝鮮半島支配を否定し、旧日本軍の性奴隷についても日本軍が売春を強要したという歴史的資料はないという妄言を吐いた」「一国の首相として持つべき最低限の歴史認識さえもない人物」と批判して謝罪と賠償を要求している。

一方、大韓商工会議所は高市首相の就任を歓迎する声明を出している。「急変する世界の通商環境の中、韓国と日本は共通の課題に直面」しており、「高市首相のリーダーシップが日本の新しい活力となり、近隣諸国と地域全般の有意義な進展を導いていくことを確信する」と表明した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨

ビジネス

英総合PMI、12月速報は52.1に上昇 予算案で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中