「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
EXPLOITED ABROAD
筆者が岡野に会ったのは23年9月、まだ肌寒い春先のシドニーだった。その時点では別のビザで「稼げる」日本語学校に勤務していた彼は、ワーホリ中に時給27豪ドル(当時1豪ドル=約70円)で働いた肉の解体工場での勤務の話になると、シャツの袖をめくり上げ、左手首を見せた。
「4針ですかね。縫いました」。解体工場では、ナイフの使い方などの研修はなく、いきなり現場に放り込まれて、「隣の人の動作を見て覚えろ」という雰囲気だったという。
「僕はその時、内臓をナイフで切り分ける仕事をしていました。一番力が必要で、なぜかアジア系ばかりが配属されていたセクションです。ベルトコンベヤーで内臓が流れてくるんですけど、流れている間に全部終わらせないといけない状況でした。作業中もラインが止まるわけではないので、間に合わなくてやばいと思っていました。本当は諦めてゴミにすればよかったのですが、売れるものを廃棄すると(白人の)スーパーバイザー(上司)からすごく怒られるので、最後まで頑張ってやっていたら、焦って(ナイフが)肉に引っかかってしまった。戻そうとしたんですが、勢い余って左手を刺してしまいました」。
これは「職場で1カ月に数回生じる珍しくもないケガ」だったという。
また彼は、滑りやすい内臓を切り分ける際に左手で内臓を強く握って固定していたが、指の腹から圧迫されたせいで爪が内出血を起こし「日に日に青くなって最終的に中指の爪が剝がれた」こともあったと語った。