アフガン人は強制送還、もしくは⋯イランに逃れた難民を待つ「残酷すぎる二択」の運命とは
IRAN PURGES ITS PAST
90年代に東部ファリマンの悪名高い難民収容キャンプに放り込まれ生き残ったユネス・ヘイダリは、イラン警察からの過酷な仕打ちを克明に記録し、『鉛の日々』と題する本にまとめた。法的根拠もなく拘束され、バスに乗せられ、隔離されたキャンプで屈辱的な扱いや苛烈な拷問を受けたことがつづられている。
イランでのアフガニスタン難民に対する長年の虐待の実態を明かした同書が出版されたのは90年代だが、難民・移民に対する法的枠組みや当局の対応は今も改善されず、放置されたままだ。ヘイダリの悲惨な体験は、そのまま現在のアフガニスタン難民のそれに重なる。
79年のソ連軍侵攻を機に内戦が始まると、数百万のアフガニスタン人が豊かな産油国イランに逃げ込んだ。その後のアフガニスタンで半世紀近くも政情不安が続いているのは周知のとおりだ。
この間、イランは常に重要な当事国として立ち回り、ソ連に抵抗するアフガニスタン人を支援した時期もある。内戦中はアフガニスタン国内の特定勢力を支援した。2021年にはタリバンの進軍を後方支援し、国際社会の承認するアフガニスタン政府を崩壊に追い込んだ。
ちなみに、この時も120万人近いアフガニスタン人が祖国を捨ててイラン側に脱出している。国内で安定した暮らしを望めない彼らから見れば、隣国イランはそれなりに平穏な場所で、どうにか生計を立てられそうに思えたからだ。