「韓国のトランプ」李在明、ポピュリズムで掴んだ勝利の代償とは?

SOUTH KOREA’S TRUMP

2025年6月6日(金)15時42分
木村 幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授、本誌コラムニスト)

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昨年12月3日夜の突然の戒厳令で韓国政界は大混乱。韓国軍兵士が国会への突入を試みた CHUNG SUNG-JUN/GETTY IMAGES

アキレス腱は司法リスク?

李のアキレス腱として知られているのは、公職選挙法違反をはじめとする司法リスクである。大統領選直前の5月1日、最高裁判所に相当する韓国の大法院は、李在明の疑惑に関わる高等裁判所の無罪判決を破棄、差し戻した。

大法院の判決は、李在明に関わる疑惑の事実認定にまで事実上踏み込んだ形になっており、このままで裁判が続けられれば、彼に対する有罪判決が出る可能性は極めて高い。そしてそこで禁錮刑以上の判決が出れば、李は現職の大統領でありながら、被選挙権を失う、という事態が出現する。

とはいえ、ここで法律論争が発生する。韓国憲法は現職の大統領に対して、内乱罪などを含む一部犯罪を除いて刑事訴追されないと定めている。

しかし、それでは既に刑事訴追されている人物が大統領に当選した場合、この刑事裁判が停止されるのか。この点については明文の規定はなく、先の規定を拡大解釈して李に対する裁判が停止されるべきかが争われる。


併せて、大統領が被選挙権を失った場合に、その職を辞するべきか否かについても議論がある。韓国の国会法は国会議員が被選挙権を失った場合には、その職を失うと定めているが、大統領についてはこちらも明文の規定は存在しない。

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