台湾人が中国に「強制送還」されている...カンボジアの特殊詐欺摘発は「国家ぐるみ」の演出か?
Deported to the Wrong Country
テイラーは今回逮捕された約180人について見解を示す際に、過去10年ほどの間に中国に送還された約600人の台湾人に言及し、このうち「相当数が人身取引の被害者だと信じるに足る理由がある」と述べた。それなのに「彼らが容疑者なのか被害者なのかを見極める作業は行われなかった」と、彼は言う。
その主な理由は、台湾の外交的地位が特殊であることだ。カンボジア当局は台湾人を人身取引の被害者と認定することに消極的で、それが彼らの帰還をますます困難にしていると、テイラーは指摘する。
4月の強制送還は、習の訪問に合わせた演出の意味合いも強い。中国が目指す国際犯罪の封じ込めに、カンボジアは協力を惜しまないというメッセージを送るためだ。
中国はオンライン詐欺の摘発を強化している。メコン地域の国々に特殊詐欺のより広範な取り締まりを促すため、今年に入って多国間会議まで開催した。
最初に行動を起こしたタイは、ミャンマー東部の詐欺拠点に対して大規模な強制捜査を実施。容疑者と被害者のふるい分けも行った。
その後カンボジアが、オンライン詐欺や組織犯罪の取り締まりを強化する「省庁間タスクフォース委員会」を設置。フン・マネット首相が自らこれを率いると発表した。
だがその数日後には、プノンペンで強制的に詐欺に関与させられている人物が暴行を受けているように見える動画を公開したとして、地元のジャーナリスト2人が扇動罪で逮捕・起訴された。
カンボジアでは昨年も、詐欺ネットワークを追っていたジャーナリストが身柄を拘束され、1カ月にわたって収監されている。