最新記事
特殊詐欺

台湾人が中国に「強制送還」されている...カンボジアの特殊詐欺摘発は「国家ぐるみ」の演出か?

Deported to the Wrong Country

2025年6月4日(水)14時20分
コビー・ホッブズ(ジャーナリスト、在カンボジア)
特殊詐欺に関わったとしてプノンペン国際空港から中国に送還される中国人と台湾人の容疑者

特殊詐欺に関わったとしてプノンペン国際空港から中国に送還される中国人と台湾人の容疑者(2016年) SAMRANG PRINGーREUTERS

<中国政府に配慮して特殊詐欺容疑者を中国へ移送。だが、その多くは人身取引によって強制的に加担させられている>

カンボジア当局は4月、首都プノンペンでオンライン詐欺の拠点を強制捜査し、180人近い台湾人を逮捕、中国本土に移送した。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がカンボジアを公式訪問する直前のことだった。

移送された人々の身元や正確な人数ははっきりしない。その理由は、カンボジアが台湾とは正式な外交関係にないこと、そしてカンボジア政府が発表した声明が短く素っ気ないものだったためだ。


当然ながら台湾政府は、強い抗議を表明した。台湾人の詐欺の容疑者が中国本土に移送されるケースは、かなり前から続いている。

しかし情報筋によれば、この一件には別の側面がある。逮捕された1人に面会したという台湾政府関係者はディプロマット誌に対し、中国に移送された多数の容疑者は、カンボジア当局が言うように詐欺グループに自発的に加わっていたのではなく、人身取引の被害者である可能性が高いと言うのだ。

同じ見方は、カンボジアで詐欺を強要されていた人々の救出に携わる専門家も示している。情報筋によれば、同様のケースはこれまで数百人に上るという。

カンボジアで長期政権を敷いたフン・センは、1997年のクーデターで権力を掌握すると、数週間後にはプノンペンにあった台湾の貿易事務所を閉鎖。中国に接近する一方で、西側諸国とは一層距離を置くようになった。

投資
「FXで長期投資」という投資の新たな選択肢 トライオートFX「世界通貨セレクト」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、マスク氏との電話会談「興味なし」 6日

ビジネス

米5月雇用13.9万人増に鈍化、失業率横ばい 関税

ワールド

韓国新大統領がトランプ氏と電話会談、関税巡る取り組

ワールド

ロシア中銀22年9月以来の利下げ、成長鈍化で 金利
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが、今どきの高齢女性の姿
  • 2
    脳内スイッチを入れる「ドーパミン習慣」とは?...「朝の1杯」と「心地よい運動」の使い方
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 5
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    ガザに向かうグレタ・トゥーンベリの支援船から救難…
  • 8
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 9
    ウーバーは絶体絶命か...テスラの自動運転「ロボタク…
  • 10
    日本に迫る「ゼロパンダ」の未来...中国はもう貸さ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 8
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 9
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 10
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中