最新記事
韓国大統領選

韓国大統領選挙、イ・ジェミョンが勝利宣言「第1の使命は内乱克服、国民を統合させる」

2025年6月4日(水)02時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
投票をする親子

党本部近くで「勝利宣言」をするイ・ジェミョン候補 JTBC / YouTube

<3年ぶりに革新系が政権を取り戻す>

3日午前6時から韓国各地の投票所およそ1万4千カ所で一斉に始まった第21代大統領選挙は、午後8時で投票が締め切られ、すぐさま全国254の開票所で開票作業が始まり、革新系の共に民主党のイ・ジェミョン(李在明)候補が当選を確実とした。

主要メディアが「当確」

第21代大統領選挙の開票序盤の開票率5.62%基準ではキム·ムンス(金文洙)国民の力候補がリードしていたが、開票率14.5%でイ・ジェミョン共に民主党候補が逆転、その後もリードを広げて当選を確実とした。

4日、中央選挙管理委員会によると、開票率93.89%基準でイ・ジェミョン候補の得票率は48.78%と集計された。 続いて、キム・ムンス候補は42.11%、イ·ジュンソク(李俊錫)改革新党候補は8.03%となっている。


また韓国主要メディアである地上波3社KBS、MBC、SBSが開票20%を超えた時点でイ・ジェミョン候補が当選有力と判断した。なかでもKBSは23時41分に「KBS予測システム「共に民主党、李在明候補当選確実」判定」と報じた。また聯合ニュースも当選確実と伝えている。

MBCは当選予測システムである「的中2025」はこの日の夜10時47分、イ・ジェミョン候補の当選が97.6%の確率で有力だと予測した。 MBCは、「予測システムを通じて出口調査と開票状況などを総合的に分析し、このような結論を下した」と明らかにした。

また、SBSも当選予測システムでイ・ジェミョン候補当選が有力と判定したと伝えたほか、ケーブル局のJTBCも当選有力とした。

イ・ジェミョン、勝利宣言

「当確」が伝えられるとイ·ジェミョン候補は、仁川の自宅から出て支持者たちと取材陣の前に短いコメントを述べた。

「まだ開票が進行中なので何とも申し上げにくいのですが、もしこのまま結果が確定すれば韓国国民の偉大な決定に敬意を表します。与えられた大きな責任と使命を私たち国民の期待に反しないよう最善を尽くして遂行するようにします」

イ・ジェミョン候補はこの後、自宅を後にして共に民主党の党本部のあるヨイド(汝矣島)へと移動。党本部で党関係者に挨拶した後、グラッドホテル前の特設ステージに登場し、支持者らを前に勝利宣言をした。

「(不法戒厳令の後)6ヵ月が過ぎて彼らを罷免し、この国の主人がまさに私たち自身だということを投票で証明してくれてありがたい。皆さんが昨年12月3日の内乱の夜からこの瞬間まで、切に願ったことの一つは、この国が平凡な市民の国であるという事実。大統領が行使するすべての権力は国民から来たものであり、その権力は大統領の私的利益のためではなく、国民の暮らしとこの国の明るい未来だけに完全に使われなければならないという事実を証明(することだった)」と述べた。

続けてイ・ジェミョンは「皆さんが私に任せた最初の使命は内乱を確実に克服し、二度と国民が任せた武器で国民を脅かす軍事クーデターがないようにすること」とし「この国の民主主義を回復し、民主共和政共同体の下で国民が主権者として尊重され、共に生きていく世の中を作ること、必ずその使命に従って守る」と語った。

経済の立て直し、国民生活を回復させることも自らの使命として強調した。 「明日当選者に確定されるその瞬間から全力を尽くして皆さんのこの苦しい人生を最も早い時間で最も確実に回復させるようにする」と明らかにした。

また彼は「平和で共存する安定した韓半島を作る」として「戦う必要がないように平和を作ることが真の安保という確信を持って南北間対話をし、疎通し共存しながら共存、共同繁栄の道を探していく」と明らかにした。彼は「朝鮮半島情勢を速かに安定化し"コリアリスク"を最小化し、朝鮮半島の安保問題により国民生活がさらに悪くならないようにする」と付け加えた。

キム候補、言葉少なく敗北宣言

キム·ムンス候補は敗北がほぼ確実となった4日午前1時半から国民の力党本部で記者会見を開き、「国民の選択を謙虚に受け入れる」と明らかにした。

キム候補は「当選されたイ·ジェミョン候補にお祝いを申し上げる。これまで私に送ってくださった国民の皆さんの熱い声援を忘れない」とし「私を選出して一緒に走ってくれた党員同志たちの献身に感謝する」と話した。

彼は続けて「大韓民国はどんな危機にぶつかっても国民の力で偉大な精進を続けてきた。足りない私に過分な声援を送って下さった国民の皆さんに心より感謝申し上げる」と話した。

キム候補は党関係者が用意した花束を受け取ることを固辞し、言葉少なく会見を終えた。

支持者らは「でっち上げだ!」「あれは嘘だ」

一方、キム・ムンス候補支持者らは、開票が始まる前からソウル市ジョンノ(鍾路)区で保守系団体が主催するライブビューイング「大統領選挙開票放送視聴集会」に120人余りが集まった。大多数が60〜80代だったが、20〜30代の参加者も少なくなかった。太極旗と星条旗、赤いペンライトを手にしたり、赤い上着を合わせて着ていた。

当初は賑やかだった会場だが、出口調査の結果が伝えられると雰囲気は急激に静まった。キム候補が遅れを取っているという予測に、あちこちからブーイングが殺到し、参加者たちの表情は固まった。

大邱·釜山·慶北·慶南などでキム候補の得票予想が高く出ると支持者たちは頭上で拍手をしながら叫んだが、一方で蔚山でイ・ジェミョン候補の得票率が先立つと「あれは嘘だろう」「ありえない、蔚山で?」「操作だ!」と叫んだ。

イ・ジュンソク候補も早々に敗北認める

改革新党のイ·ジュンソク候補が「今回の選挙結果の責任はすべて私の役割」とし「明日から国会議員のイ·ジュンソクに復帰する」として、敗北を認めた。

イ・ジュンソク候補は3日午後9時30分頃、ソウル市ヨイド(汝矣島)の議員会館にある改革新党の開票状況室でこのように明らかにした。

イ・ジュンソク候補は「今回の選挙を通じて(戒厳でもたらされた)混乱が終息し、もう一度大韓民国が跳躍してほしい」とし「今回の選挙過程で情熱と誠意を尽くしてくれた改革新党党員と支持者の皆様、愛してくださった国民の皆様に感謝する」と述べた。

続けて「何より今回の選挙過程でよくできたことと、できなかったことをよく分析し、1年後に近づいた地方選挙で私たち改革新党が一段階躍進することを期待する」と語った。

イ・ジュンソク候補は「今回の出口調査結果によればイ·ジェミョン大統領候補が大統領に就任することになるが、国民統合と経済状況に対する細心で的確な判断を期待する」として「改革新党は野党としての役割を着実にする」と話した。

また「6カ月間の混乱期間中、イ·ジュンソクを信頼し支持してくれた地元のトンタン(東灘)の住民たちにとても感謝している。明日から国会議員イ·ジュンソクに復帰し、地元のことを細心に処理するようにする」と語った。

出口調査ではイ・ジェミョンがリード

韓国の地上波放送3社(KBS·MBC·SBS)共同出口調査では、共に民主党イ・ジェミョン(李在明)が51.7%と圧倒、キム・ムンス(金文洙)候補39.3%、イ・ジュンソク(李俊錫)候補が7.7%、民主労働党のクォン·ヨングク(權英國)候補は1.3%を記録した。

放送3社の出口調査結果によると、ソウルでイ·ジェミョン候補49.3%、キム候補40.1%、イ·ジュンソク候補9.2%を得票している。キョンギド(京畿道)はイ·ジェミョン候補が55.8%、キム候補が34.6%、イ·ジュンソク候補が8.5%だった。 インチョン(仁川)はイ·ジェミョン候補53.6%、キム候補37.4%、イ·ジュンソク候補7.5%となった。

キャスティングボートを握るといわれるチュンチョンナムド(忠清南道)ではイ·ジェミョン候補が優勢だった。テジョン(大田)でイ·ジェミョン候補が51.8%、キム候補が38.3%、イ·ジュンソク候補が8.8%だった。 チュンナム(忠南)·セジョン(世宗)ではイ·ジェミョン候補51.3%、キム候補39.7%、イ·ジュンソク候補8.2%だ。チュンチョンプクド(忠清北道)はイ·ジェミョン候補51.1%、キム候補40.2%、イ·ジュンソク候補7.9%だ。

カンウォン(江原)はイ·ジェミョン候補48.8%、キム候補42.2%、イ·ジュンソク候補6.7%だ。チェジュ(済州)はイ·ジェミョン候補57.9%、キム候補31.2%、イ·ジュンソク候補9.3%と集計された。

放送3社の出口調査は同日午前6時から午後8時まで、全国325の投票所から出口に出る各5番目の投票者を等間隔で調査する方式で行われた。 回答者数は8万146人、標本誤差は95%に±0.8%ポイントだ。 韓国リサーチとイプソス、コリアリサーチインターナショナルが調査機関として参加した。

ケーブル局もそれぞれ独自の予測調査結果を発表した。 JTBCはイ・ジェミョン候補50.6%、キム候補39.4%、チャンネルAはイ・ジェミョン候補51.1%、キム候補38.9%、MBNはイ・ジェミョン候補49.2%、キム候補41.7%と予測した。

出口調査による得票予想

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

STマイクロ、第4四半期は増収見込む 設備投資計画

ビジネス

金融システムは安定性を維持、仲介活動も円滑=日銀リ

ビジネス

日経平均は続落、利益確定売り 米中摩擦など重し

ビジネス

欧州航空宇宙3社、衛星事業の統合発表 米スペースX
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 6
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 9
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中