最新記事
米中関係

中国との戦争は避けられるか――米国が描く対中抑止と経済デカップリング戦略

Why Trump's War With China is Much Bigger Than Trade

2025年4月14日(月)18時55分
マシュー・トステビン(本誌シニアエディタ―)、ディディ・キルステン・タトロウ(本誌国際問題担当シニアレポーター)

「中国がアメリカから略奪する時代は終わった」と、ホワイトハウスのスティーブン・ミラー大統領次席補佐官が語ったのは、トランプが市場の混乱に直面して他国への関税発動を一時停止したものの、中国への関税は倍増させた直後だった。

中国は関税の脅しに報復で応え、トランプの要求に屈しないと宣言した。中国外務省の林建報道官は、「中国はこのような覇権主義的でいじめのような動きを断固として拒否し、決して受け入れない」と述べた。

中国は今、冷戦でソ連が敗北した後に確立されたアメリカの覇権に挑戦している。それは経済だけでなく軍事的な挑戦でもある。習近平は、中国共産党政権樹立100周年にあたる2049年までに世界の覇権を握るという野望を公然と掲げている。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙によれば、「米中戦争は避けられるか?不可能ではないが、起きる可能性は高い」と、政治学者のグレアム・アリソンは4月6日、ハーバード大学で開催された中国フォーラムで語った。

アリソンは、ギリシャの都市国家スパルタとアテネが紀元前5世紀に繰り広げたペロポネソス戦争に由来する「トゥキディデスの罠」という言葉を引き、新興の強国と既存の覇権国が戦争に突入する可能性の高さを表現した。

かつては「経済的な相互依存は国家間の戦争の可能性を減少させる」というリベラルな見方も強かったが、現在の米中貿易戦争はむしろ「デカップリング(分断)」を加速させている。

変化は、第1次トランプ政権下、そしてジョー・バイデン前大統領の下ですでに起こっていた。中国の対米輸出は、2016年にトランプが大統領に当選したときには輸出総額の20%近くあったのに対し、2023年には13%程度と大きく低下した。対米輸入も10%近くから7%に落ち込んだ。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る

ビジネス

米CB消費者信頼感、12月は予想下回る 雇用・所得

ワールド

トランプ氏「同意しない者はFRB議長にせず」、就任

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中