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ヨルダン

これは家父長制社会への闘争宣言...女性への暴力が絶えないヨルダンで「女性向け護身術教室」を立ち上げた私の挑戦記

Self-Defense to Empower Women

2025年4月3日(木)17時20分
リナ・カリフェ(シーファイター創設者)
「女性向け護身術アカデミー」を創設したカリフェ。2015年に当時のバラク・オバマ米大統領も活動を紹介

「女性向け護身術アカデミー」を創設したカリフェ。2015年に当時のバラク・オバマ米大統領も活動を紹介 STUART C. WILSON/GETTY IMAGES FOR THE BUSINESS OF FASHION

<「ジェンダーに基づく暴力」が吹き荒れるヨルダンで、女性向け護身術アカデミーを創設。脅迫の嵐に遭っても、活動を続けてこられた理由とは──>

ヨルダン育ちの私にとって、女性に対する暴力はどこに行っても付いて回る問題だった。女友達はパートナーや親族に虐待されたと嘆き、通りで女性が襲われたという話もよく耳にした。そんな話を聞くたびに、私の中で怒りの炎がメラメラと燃え上がった。その炎は次第に大きくなっていき、もはや黙って見ていられなくなった。

【動画】護身術アカデミー「シーファイター」の短編ドキュメンタリー(Redbull撮影)

子供の頃の夢はオリンピックに出ることだった。テコンドーの国内・国際大会で20個のメダルを獲得し、ヨルダン代表チームにも選ばれた。だが私は競技の道を捨て、2012年にヨルダン初の女性向け護身術アカデミー「シーファイター」を創設した。


それは家父長制社会に対する私の闘争宣言だった。女性を黙らせ、女性の主体性を奪い、「ジェンダーに基づく暴力」を容認する社会への......。

開校の2年前、手始めに首都アンマンの実家の地下室を道場とし、友人2人に手ほどきした。夜間にこっそりと。周囲に知られたら正式な開校前につぶされかねないからだ。

最初の数人の生徒たちの評判がよかったので、数カ月後に貯金をはたいてアンマンに小さな部屋を借りた。そこが記念すべき第1号のシーファイターの道場となった。

生徒が増えるにつれ、世間の風当たりは厳しくなった。裁判沙汰も起きたし、誹謗中傷や脅迫の嵐にも遭った。くじけそうになる気持ちを奮い立たせてくれたのは、母の思い出だ。母は幼い私に格闘技を習わせてくれた。

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