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イスラエルが空と陸からシリアを攻撃──14年の内戦を経て立ち上がった暫定政府の行方

Israel Is Escalating Its War in Syria

2025年4月1日(火)12時12分
チャールズ・リスター(中東問題研究所上級研究員)

シリアからの攻撃はゼロ

その一方でアサド政権崩壊後の4カ月間、シリアからイスラエルを標的にした攻撃は一度として行われていない。その間、暫定政府の治安部隊は少なくとも18回、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ向けの武器輸送を阻止し、かつてイランが関与したロケット発射施設を少なくとも8カ所解体した。

シリアの暫定政府は近隣諸国や国際社会とのトラブルを回避したいという姿勢をはっきり示してきた。10年近くロシアの軍事的脅威にさらされてきたにもかかわらず、暫定政府はロシアとも実りの多い対話を定期的に行っている。


そうした外交姿勢の大きな転換を支えるのは、プロの政治家も顔負けの実利主義だ。戦いに明け暮れていたイスラム主義者たちがシリアの安定化と国際社会への復帰を望み、実利主義へと転じたのだ。

1月下旬以降、トルコはシリア暫定政府に対し、空軍基地への戦闘機や防衛システムの配備を含む大型の軍事支援を提案している。空の主権を確立するためだ。暫定政府の高官は匿名を条件に、イスラエルが事態をエスカレートさせているせいで、この種の軍事合意が締結される日は遠くないかもしれないと語った。

もっとも暫定政府は提案への合意を先送りした。そんなことをすれば、そもそも脆弱な政権移行に深刻な危機をもたらしかねないからだ。だが事態の推移を見る限り、そうした実利主義的対応はますます難しくなっている。

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