最新記事
カナダ

移民問題がカナダを二分...トルドー辞任と進歩派指導者が直面する「二重の圧力」

The End of the Modern Progressive Experient

2025年1月14日(火)18時59分
ヘスス・メサ、カーロ・ベルサノ(いずれも本誌英語版エディター)
移民問題がカナダを二分...トルドー辞任と進歩派指導者が直面する「二重の圧力」

2015年の首相就任時にはトルドーに世界が期待を寄せた AP/AFLO

<右派ポピュリズムが世界を席巻するなか、「多様性はカナダの強みです」と語り、リベラルの象徴だったカナダ首相の退場が意味するもの>

1月6日、カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相が、10年近く暮らしてきた首都オタワの首相公邸の玄関前で記者会見に臨んだ。

ジョージアン・リバイバル様式のこの邸宅前は、新型コロナのパンデミック初期にトルドーが定期的に会見を開いていた場所。

この日の姿は、コロナの状況や政府の取り組みについて語る首相をカナダ国民が支持していた当時を思い起こさせるものだった。


時は流れ、かつて現代の進歩主義運動の象徴だった53歳のトルドーは、同じ場所で辞意を表明した。国民や自らが率いる与党・自由党の幹部の支持を失い、10月までに行われる総選挙での惨敗が確実視されるなかでの発表だった。

「この国には次の選挙で本物の選択肢が必要だ」と、沈痛な面持ちでトルドーは語った。「私はその選択肢として最善の存在ではない」

トルドーには国際政治の変革者として喝采を浴びた時代があった。

環境保護主義者、フェミニスト、難民や先住民の権利擁護者を自任し、映画スターさながらのルックスと元首相の息子という血統を兼ね備えた彼は、2015年の総選挙を制して首相に就任し、西側のリベラル派の象徴となった。

だが国民との蜜月は2年ほどしか続かなかった。スキャンダルが相次ぐなか、17年にはイメージに傷が付き始め、小さな火種はコロナ禍の間に大きな炎へと燃え上がった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中