最新記事
中国経済

内幕を知ってゾッとする...中国で「60円朝食」が流行する深刻なワケ

2025年1月16日(木)09時34分
真壁昭夫(多摩大学特別招聘教授)*DIAMOND Onlineからの転載

飲食業界「激安メニュー」が増加「デフレ・マインド」が社会に浸透へ

バブルの後始末を先送りすればするほど、不況は深刻化する。不良債権残高が増えるほど、金融システムの不安定性は高まる。中国政府は国有・国営企業など供給サイドの成長を重視していることもあり、生産能力は膨張傾向にある。不動産以外の業種でも債務問題の深刻化、収益性の低下によって人員カットを含むリストラを余儀なくされる企業は増えるだろう。

そうした展開を懸念し、中国から脱出する企業が増えている。すでに、独フォルクスワーゲンなど、海外企業が中国自動車市場で収益を得ることが難しくなっている。9月中旬、フォルクスワーゲンは、上海汽車集団(SAIC)と合弁の南京工場の生産停止を計画していると報じられた。中国企業は海外市場に進出して生き残りを目指そうとしており、アリババやテンセント、BYDなどの大手だけでなく、中小・新興企業も後を追っている。


この動きに伴い、雇用機会や優秀な人材も中国国内から海外に流出することになる。中国国内では、雇用環境の悪化を懸念する消費者が増えている。2024年の中秋節休暇中(9月15~17日)、中国の国内旅行者の1回当たりの支出額は、コロナ禍前19年と比べて1.6%増にとどまったようだ。先々の雇用・所得環境の悪化に備え、レジャー支出を抑え、貯蓄に励む国民の増加を示唆している。

節約を志向する人の増加に合わせ、飲食業界では「激安メニュー」が増加している。朝食を3元(約60円)で提供するファストフードチェーン「南城香」の人気が上がり、ピザハットやマクドナルドなど外資企業も格安メニューを投入せざるを得なくなっている。

今のところ中国政府は、日米欧が懸念するEVの過剰な生産能力を解消する考えを示していない。これからも、中国では値下げ競争の激化により企業の収益性は低下し、不動産以外の業種でも不良債権は増加すると予想される。

このままでは、景気の低迷は長引き、支出を抑え低価格のモノやサービスを買い求める「デフレ・マインド」が社会に浸透するだろう。中国経済は、わが国が経験した長期低迷の暗闇に、足を踏み入れつつあるように見える。


※当記事は「DIAMOND online」からの転載記事です。元記事はこちら
newsweekjp20241210070726-0536f5d9a0b841fadc7a37a3ae2182051cf62ee9.jpg





ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中