最新記事
中国経済

内幕を知ってゾッとする...中国で「60円朝食」が流行する深刻なワケ

2025年1月16日(木)09時34分
真壁昭夫(多摩大学特別招聘教授)*DIAMOND Onlineからの転載

中国の住宅在庫の処理「140兆円を上回る資金が必要」

これまでにも中国政府は金融緩和を実施し、その上で住宅市場の支援措置を推進してきた。5月に中央政府は、地方政府に優良な住宅開発案件をピックアップさせ、デベロッパーから買い取るよう指示を出した。それでも、目立った効果は出なかった。

国際通貨基金(IMF)は、中国の住宅在庫の処理には「140兆円を上回る資金が必要」と指摘している。しかし今のところ、中国政府はそこまでの規模の対策を打ち出していない。地方政府の財政悪化により、十分な対策が打てないとの指摘もある。


矢継ぎ早に発表された対策を見ても、基本的には金融緩和により需要を前倒しで取り込むことが主な目的になっている。その発想だけでは、不動産バブル崩壊の後遺症を解決するのは難しいはずだ。

米国、わが国やスウェーデンなど北欧の過去の教訓に基づくと、バブルが崩壊すると政府・中央銀行は債務返済能力を喪失した企業に公的資金を注入し、不良債権処理を進めることが必要不可欠である。それと同時に、利下げなど金融緩和を進め、公共事業も実施して経済全体に刺激をもたらす。

その上で重要なのが、政府の「成長戦略」である。産業のうち期待できる分野に経営資源が配分されるよう規制緩和し、民間企業のリスクテイクをサポートすることにより、持続的な景気回復が可能になる。

1990年代、わが国は財政支出の増加と金融緩和を実施したが、残念ながら不良債権処理は遅れた。構造改革の実行もできなかった。その結果、日本経済は「失われた30年」と呼ばれる長期の停滞に陥った。

不動産バブルが崩壊した中国も、本格的な不良債権処理は遅れている。中国では、地方政府の “隠れ債務” である地方融資平台の救済、再編も遅れた。今なお、地方政府は地方債の発行を増やし、当面の資金繰りの確保や住宅市場の支援策の資金を調達しようとしている。その状況下で金融緩和を進め融資を増やそうとしても、需要が持続的に増えることは難しいはずだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

仏大統領、中国に関税警告 対EU貿易黒字巡り=仏紙

ワールド

仏大統領、ウクライナ情勢協議へ8日にロンドン訪問 

ワールド

香港議会選の投票率低調、過去最低は上回る 棄権扇動

ワールド

米特使、ウクライナ和平合意「非常に近い」 ロは根本
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中