最新記事
中東情勢

ヨルダン川西岸で拡大するイスラエル入植地...「トランプ2期目」に期待の声

2024年11月27日(水)21時23分
西岸地区の入植地シロ

11月23日、イスラエルが占領するヨルダン川西岸地区で同国による入植活動が過去に例のない拡大を見せた今、入植推進派の一部からはトランプ次期米大統領に期待する声が上がる。写真は西岸地区の入植地シロ。11月9日撮影(2024年 ロイター/Mohammed Torokman)

イスラエルが占領するヨルダン川西岸地区で同国による入植活動が過去に例のない拡大を見せた今、入植推進派の一部からはトランプ次期米大統領に期待する声が上がる。目指すは、パレスチナ側が将来の独立国家の中心とみなす同地区にイスラエルの主権を確立するという夢の実現だ。

2年前にネタニヤフ首相が極右連立政権のトップとして返り咲いて以来、西岸地区はユダヤ人入植地の急速な拡大により、その姿を変えてきた。その間、入植者による暴力行為が拡大し、米国による制裁を受けるに至った。

ここ数週間、一部の入植者が西岸地区のヨルダン渓谷で権利を主張する複数の丘の頂上にイスラエル国旗が翻った。地元のパレスチナ住民の多くは、これらの地域でイスラエル側の支配が拡大するのではないかと懸念を募らせている。入植者のあいだでは、投票日を前にトランプ氏の勝利を祈る声があった。


 

イスラエルによる西岸地区の併合を支持する活動家で執筆活動も行っているイスラエル・メダッド氏は、西岸地区の入植地シロで40年以上暮らしている。自宅でロイターの取材に応じた同氏はトランプ氏の勝利について、「とても期待している。私たちはやや有頂天になっているとさえ言える」と語る。入植者たちにとっては、トランプ氏がイスラエル寄りの発言で知られる人物を政権幹部候補として次々に指名しているのも朗報だ。その1人が、駐イスラエル大使として指名されたマイク・ハッカビー氏。キリスト教福音派であり、西岸地区は占領地ではないとの発言もあり、「入植地」ではなく「コミュニティー」という呼称を好んでいる。

ここ1カ月、米国のキリスト教右派との人脈を築いてきたイスラエル政府閣僚と入植推進派は、かつては過激な主張とされていた西岸地区における「主権の回復」を公式発言においても前面に出すようになっている。ネタニヤフ政権はまだこの件について公式決定を発表していない。首相府広報官は、この記事に対するコメントを控えるとしている。

イスラエルとサウジアラビアの関係正常化に向けた「アブラハム合意」をベースに、もっと広範囲の合意をめざすという米国政府の戦略的野心をリスクにさらすような動きをトランプ次期大統領が支持するかどうか、確かなことは何もわからない。サウジアラビアは、世界の大半の国と同様、西岸地区におけるイスラエルの主権を否定している。

東京アメリカンクラブ
一夜限りのきらめく晩餐会──東京アメリカンクラブで過ごす、贅沢と支援の夜
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナの長距離ミサイル使用を制限 ロシア国

ワールド

米テキサス州議会、上院でも選挙区割り変更可決 共和

ビジネス

植田日銀総裁「賃金に上昇圧力続く」、ジャクソンホー

ワールド

北朝鮮の金総書記、新型対空ミサイル発射実験を視察=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で見つかった...あるイギリス人がたどった「数奇な運命」
  • 4
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中