最新記事
中国

中国の言う「台湾は中国」は本当か......世界が中国に警告を発し始めた

IS A PASSAGE FOR TAIWAN IN SIGHT?

2024年11月12日(火)18時00分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

「意図的な未確定状態」が米政府版「一つの中国」政策の核

こうしたいわば「意図的な未確定状態」は、アメリカ政府版の「一つの中国」政策(中国に台湾は含まない)の核を成してきた。日本でその曖昧さは一般大衆に広く理解されていないが、政治指導者や現代中国の研究者にはよく知られ、受け入れられている。野田佳彦首相(当時)は2012年、「(1952年のサンフランシスコ)平和条約第2条に従い、台湾に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しており、台湾の領土的な位置付けに関して独自の認定を行う立場にない」と日本の立場を繰り返した。

サンフランシスコ平和条約とアルバニア決議が台湾の領有権について結論を下すのを避けたことは賢明だった。この方針は、これまで70年にわたり、台湾が中国の専制体制の手に落ちることを防ぐ上で大きな役割を果たしてきた。


しかし、いま中国は途方もない力を持つようになっていて、しかも台湾を併合したいという意欲を隠そうとしない。こうした点を考えると、台湾の民主体制が中国に押しつぶされる危険はないのか。

確かに、その危険はあるが、そうした危うい状態から抜け出せる日は遠くない。

さまざまなデータを見ると、中国の「奇跡の経済成長」は既に終わった。政府統計でも、若者の失業率は20%に迫っている。社会は以前より貧しくなり、暴力沙汰が起きやすくなった。人口も減少し始め、社会の高齢化も急速に進んでいる。中国の経済成長を支えてきた欧米諸国は、中国のデカップリング(切り離し)に転じつつある。

要するに、超大国・中国は──そもそも二流の超大国にすぎなかったのだが──既に盛りを過ぎ、あとは落ちるだけなのだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米労働省、10月雇用統計発表取りやめ 11月分は1

ワールド

トランプ氏、パウエルFRB議長を改めて非難 「金利

ビジネス

米8月の貿易赤字、23.8%減の596億ドル 輸入

ワールド

独財務相「敗者になること望まず」、中国の産業補助金
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中