最新記事
北朝鮮

北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁断の韓国ドラマ」とは?

North Korea Punishes Teenage Girls for Watching Forbidden K-Drama: Video

2024年9月17日(火)14時40分
マイカ・マッカートニー
禁断の韓国ドラマ視聴で逮捕...北朝鮮の10代少女に厳罰が下る(写真はイメージです) REUTERS

禁断の韓国ドラマ視聴で逮捕...北朝鮮の10代少女に厳罰が下る(写真はイメージです) REUTERS

<北朝鮮で韓国ドラマを視聴したとして10代の少女が逮捕され、公開で見せしめにされる映像が浮上した。韓国メディアが入手したこの映像は、金正恩政権下で強まる情報統制の実態を明らかにしている>

北朝鮮の市民弾圧の実態を見せつける映像が浮上した。禁止されている韓国ドラマを見たという理由で、10代の女子生徒が公の場で見せしめにされる場面もある。

問題の映像は韓国の制作会社KBSメディアが入手した。16歳の生徒を含む若い女性のグループが、罪を犯したとして逮捕され、見せしめにされる姿が映っている。

【動画】北朝鮮で10代少女が逮捕...視聴した「禁断の韓国ドラマ」

北朝鮮政府は国内での情報の流通を厳格に統制し、市民が外国の音楽や映画、テレビ番組を見たり聴いたりすることを禁じている。違反が見つかれば厳罰を受け、公開見せしめや投獄、場合によっては処刑されることもある。

金正恩政権は、韓国メディアを北朝鮮のイデオロギーの純粋性や正当性を脅かす直接的な脅威とみなし、ここ数年はそうしたコンテンツの取り締まり強化している。

映像に映っているチョイという女子生徒は、公開見せしめの場で泣き崩れていた。こうした形の集団批判は、北朝鮮や旧ソ連、毛沢東時代の中国など共産主義国で採用されてきた。

KBSの翻訳によると、チョイはマイクに向かって「私は不純な公開プロパガンダを聴き、流布させるという過ちを犯しました」と告白し、その後手錠をかけられて連行された。

北朝鮮ではこうした見せしめが普通に行われている。それでも2020年に脱北したジャンは、これほど若い生徒が見せしめを受けていることに衝撃を隠さなかった。

「学校の生徒がこんな罰を受けるなんて、以前は見たことがなかった。手錠をかけられる姿はあまりにも衝撃的だ」とジャンはKBSに語っている。

KBSはこれを含めて10本あまりの映像を入手しており、ほとんどは2021年5月以降に制作されたものだった。

北朝鮮は2020年初め、新型コロナ対策として国境を封鎖。2023年8月になってようやく、帰国する市民の入国を認めた。

2020年には厳格なメディア統制がさらに強化され、体制を脅かす脅威とみなした外国文化を取り締まる、いわゆる「邪悪な法律」が制定された。外国のメディアや韓国の俗語なども取り締まりの対象となった。

韓国統一省が2023年にまとめた北朝鮮の人権侵害に関する報告書では、韓国ドラマを見たりKポップを聴いたりしたという理由で公開処刑される若者たちを見たと、脱北者が証言している。

北朝鮮は今年に入り、憲法を改正して韓国を「第1の敵対国」と位置付けた。

それでも韓国のメディアは北朝鮮に侵入し続けている。韓国の活動家がドラマや音楽をUSBメモリに記録して風船で北朝鮮へ飛ばすこともある。

そうした活動が南北の対立を一層あおり立て、北朝鮮は報復として、ごみや排泄物を風船に吊るして送り込んでいた。

アメリカ国務省の報道官は過去に本誌の取材に対し、北朝鮮の人権保護と、北朝鮮を出入りする情報の自由な流通を支持すると強調。北朝鮮の3つの「邪悪な法律」や、「過酷な刑罰と若者の狙い撃ち」を非難した。

北京の北朝鮮大使館とアメリカ国務省には書面でコメントを求めたが、返答はなかった。

(翻訳:鈴木聖子)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相が退陣表明、米関税で区切り 複数の後任候補

ワールド

石破首相が辞任表明、米大統領令「一つの区切り」 総

ワールド

インドは中国に奪われず、トランプ氏が発言修正

ワールド

26年G20サミット、トランプ氏の米ゴルフ場で開催
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給与は「最低賃金の3分の1」以下、未払いも
  • 3
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接近する「超巨大生物」の姿に恐怖と驚きの声「手を仕舞って!」
  • 4
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 5
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 6
    コスプレを生んだ日本と海外の文化相互作用
  • 7
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 8
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 9
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 10
    「日本語のクチコミは信じるな」...豪ワーホリ「悪徳…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 5
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 6
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨッ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中