最新記事
人口減少

「意外と知らない?」日本より人口減少が深刻な国々

Map Reveals Countries With Disappearing Populations

2024年8月22日(木)13時30分
パンドラ・デワン
世界各地で人口増加の勢いが失われつつある(写真はイメージです) Nathan Anderson-Unsplash

世界各地で人口増加の勢いが失われつつある(写真はイメージです) Nathan Anderson-Unsplash

<人口増加が鈍化する中、増減が国ごとに大きく分かれている>

2022年11月に80億人を突破した世界の人口増加が減速している。ただし世界で一律に減少しているわけではない。爆発的に増えている国もあれば、減少に転じた国もある。

世界236の国と地域を調べた調査では、推定40カ国・地域で人口が減少しており、中には年に1%以上のペースで減っている国もあった。このデータは米中央情報局(CIA)が発行する「ワールド・ファクトブック」にまとめられている。

「これは主に、欧州の多くの国と東アジア(さらにはプエルトリコとキューバでも)における出生率の低さ(場合によっては極端な低さ)に起因する」。ヴィトゲンシュタイン人口統計学および世界人的資本センターの上級研究員で、ウィーン人口研究所の副所長を務めるトーマス・ソボトカは本誌にそう語った。

「人口が急減している国は、出生率の低さと国外への移住、人口高齢化が組み合わさっていることが多い。特に南東ヨーロッパと東ヨーロッパの国では、集中的な国外移住と少子化が続いたことで、人口が急激に減っている」

人口が急減している上位10カ国・地域

CIAのデータによると、人口が急減している上位10カ国・地域は以下の通り。

・クック諸島 年に2.24%減
・米領サモア
・サンピエール島・ミクロン島
・プエルトリコ
・ラトビア
・リトアニア
・ポーランド
・ルーマニア
・エストニア
・ミクロネシア連邦

この10カ国・地域を配した地図は、人口が減っている国を青で、増えている国を赤で表している。

アメリカは年に0.67%のペースで増えている。一方、地図の中で特に広大な青いエリアはロシアを示す。

ロシアの人口減少が続く理由

CIAのデータによると、ロシアの人口減少ペースは16位。その理由についてソボトカは、「低出生率、人口の停滞やわずかな減少、著しい地域格差(辺境地域の多くは縮小している)、さらには死亡率の高止まり、国民の不健康といった人口統計学的に困難な傾向が、かなり長期間続いている」と解説する。

「理論的には、ロシアがもし戦争によって新たな領土(とその人口)を大量に確保できれば、人口を増やせる可能性はある」とソボトカは言い、「現実にはそれは妄想だ」と指摘した。

「たとえロシアが侵略に成功したとしても、手に入れた都市の多くは破壊され、高齢者や弱者が取り残された状態にある。プーチンが夢見るような人口増加にはつながらない」

「さらに重要なことに、戦争は生産年齢と生殖年齢のピークにあるロシア人男性の死者や負傷者、障害者の増加を招くのが現実だ。これは労働力の急速な縮小、医療に対するプレッシャー増大、生まれてくる子供の減少にもつながる。まさにプーチンが躍起になって覆そうとしているトレンドだ」(ソボトカ)

今後も多くの国で出生率の低下と人口の高齢化が続き、こうした縮小傾向は続くだろうとソボトカは話し、世界の人口増加は、絶対的にも相対的にも減速し続けると予想。「さらに多くの国で人口が減少するだろう。これには大国も含まれる」とした。

「例えば中国はコロナ禍の2021年に初めて人口が減少した。主な原因は新型コロナの死亡率の高さではなく、出生率の低下だった。昨年、中国の人口は国連の推計で300万人以上減った。このペースは今後数年から数十年で加速するだろう。それ以外の東アジアの国でも、特に日本と韓国は、非常に低い出生率と人口の高齢化によって人口の減少が続く」とソボトカは予測している。

(翻訳:鈴木聖子)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中