最新記事
安全保障

「反米同盟の強化」へ、ロシアとイランの防衛関係とウクライナ・中東情勢の連動

IRAN TIES DEEPENING

2024年8月21日(水)16時49分
エイミー・マッキノン、ロビー・グラマー、ジャック・デッチ(いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)
イランとの仲介をロシアに期待するな

イランのペゼシュキアン大統領と会談するロシアのショイグ前国防相(左) IRAN’S PRESIDENCYーWANAーREUTERS

<ロシアとイランは近年、防衛関係を強化しており、ウクライナ戦争を続けるロシアに対し、イランは攻撃用無人機やミサイルを供与。ロシアもイラン空軍の戦闘機の近代化を支援する>

イスラエルによるとみられるイスラム組織ハマスとヒズボラの幹部暗殺が相次ぎ、イランの対応を中東各国が注視するなか、ロシアはセルゲイ・ショイグ前国防相を首都テヘランに派遣し、大統領や安全保障幹部との会談を行った。

反米同盟の強化に取り組む両国は関係を深めている。

5月の内閣改造で安全保障会議書記に就任したショイグは8月5日、テヘランでイランのマスード・ペゼシュキアン大統領やモハマド・バゲリ参謀総長と会談した。


イラン国営メディアによると、ペゼシュキアンは「ロシアは困難な時期にイランを支持してきた国の1つだ」と述べた。

ロシアは7月、ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤがテヘランで殺害されたことを「非常に危険な暗殺」と非難し、全ての当事者に対して、中東を広範な地域戦争に追いやる行動は避けるよう呼びかけた。

ロイター通信は8月6日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がショイグを通じて、イランに自制を促し、イスラエルの民間人を攻撃しないよう忠告したと報じた。

アナリストによれば、ロシアにとってウクライナ戦争から世界の関心をそらす中東の騒乱は有益だが、アメリカを含む一部の国を巻き込む地域紛争は歓迎していない。

カーネギー国際平和財団のフェローでロシア・イラン関係に詳しいニコール・グラエフスキーは「全面戦争になれば、ロシアが得をするとは考えにくい」と述べ、それが起きれば、ロシア軍が活動を続けるシリアで、イスラエルがより大規模な作戦を展開する可能性があると指摘した。

建設的な仲裁は期待できない

ロシアが中東で仲裁役を担うことを期待するべきではないと警告する専門家もいる。

元米国務副長官で、2020~22年に駐ロシア大使を務めたジョン・サリバンは、「その考え方は、シリアやリビア、サヘル地域など、さまざまな状況で長年提起されてきた」と述べる。

「『ロシアは影響力がある。もしかすると仲裁してくれるかもしれない』というのは、欧米人の考え方だ。必然的にロシアはアメリカと対立し、建設的な影響力は行使しない」

米国務省のマシュー・ミラー報道官も、アメリカはロシアが緊張緩和に生産的な役割を果たすとは期待していないと、懐疑的な見方を示した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米有権者、民主主義に危機感 「ゲリマンダリングは有

ビジネス

ユーロ圏景況感3カ月連続改善、8月PMI 製造業も

ビジネス

アングル:スウォッチ炎上、「攻めの企業広告」増える

ビジネス

再送-ユニクロ、C・ブランシェットさんとブランドア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 4
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中