最新記事
韓国

トランプ銃撃の「奇跡の写真」で注目を集めるソニー製カメラ、韓国市場で首位独走を続ける理由

2024年8月2日(金)17時41分
佐々木和義
トランプ前大統領暗殺未遂事件の写真

トランプ前大統領暗殺未遂事件の写真が注目を集めた...... Artem Priakhin / SOPA Images via Reuters

<トランプ前大統領暗殺未遂事件の写真で注目を集めたソニー製カメラ。韓国のデジタルカメラ市場では、長年、首位を独走している......>

米国時間7月13日に発生したトランプ前大統領暗殺未遂事件で、耳に傷を負ったトランプ氏が右手を高く掲げた「奇跡の1枚」がソニーカメラで撮影されたと話題になっている。

報道写真はキヤノンとニコンが独占していたが、現場にいたカメラマンの多くがソニーを肩から下げていた。ソニーカメラは2021年の東京五輪でキヤノンとニコンの牙城だったメインプレスセンター(MPC)内にサービスブースを設置。パリ五輪でも活躍が注目されている。

デジタルカメラ、韓国で首位を独走しているソニー

デジタルカメラの世界シェアはキヤノンが46.5パーセントで、ソニーが26.1パーセント、3位はニコンの11.7パーセントとなっている。デジタルカメラは首位のキヤノンをニコンが追う構図が続いたが、2019年、ソニーが逆転して2位に躍り出た。

世界市場ではキヤノンに大きく水を開けられるソニーだが韓国では首位を独走している。上位機種であるフルフレーム市場で2020年から4年連続1位を維持する。

ソニーは1990年、韓国に進出してテレビやカメラ、ウォークマンなどの販売を開始した。その後の2013年、サムスンとLGが競合する韓国テレビ市場から撤退。カメラとオーディオ、放送機器などに注力した。

ソニーコリアが年間売上1兆ウォンを挟んで一進一退を繰り返していた2010年代前半、韓国のカメラ市場は大きく動いた。サムスンのミラーレス市場参入と撤退だ。

サムスンは1979年、ミノルタと提携してカメラ事業に参入。コニカミノルタがカメラ事業をソニーに売却した2006年、ペンタックスと提携した。ペンタックスは1957年に世界で初めてレフレックス構造を持つ一眼レフを発売した老舗だが、デジタル化競争についていけずに経営が悪化していた。

ペンタックスがリコーの傘下になって提携が消滅するとサムスンはミラーレス市場に参入、また打倒ソニーを掲げてビデオカメラを強化した。迎え撃つソニーも一眼レフの製造販売を終了してミラーレスに移行した。

ミラーレスは2008年にパナソニックが開発したレフレックス構造を省いたカメラで、サムスンは韓国ミラーレス市場で首位となり、世界市場でもキヤノン、ニコンに次ぐ3位の座をソニーと争うようになる。

サムスンがカメラ事業から撤退、韓国市場はソニーを選んだ

2010年代半ば、サムスンのカメラ事業を危機が襲う。まずはフルフレーム化だ。フィルムカメラで主流だった35ミリ判と同じサイズのフォーマットでフルサイズともいう。アマチュアカメラマンはひと回り小さいAPSが少なくないが、プロはフルフレームが主流である。ソニーが収益性の高いフルフレームに軸足を移す一方、フルフレームのノウハウを持たないサムスンは後退を余儀無くされる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日米2回目の関税交渉、赤沢氏「突っ込んだ議論」 次

ワールド

原油先物が上昇、米中貿易戦争の緩和期待で

ビジネス

午前の日経平均は続伸、一時500円高 米株高や円安

ビジネス

丸紅、26年3月期は1.4%の増益予想 非資源がけ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 9
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 10
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中