最新記事
ウクライナ戦争

「なぜ日本が支援?」池上彰と考える、侵攻が続くウクライナと私たちのつながり

2024年7月10日(水)11時00分
※JICAトピックスより転載

池上 ウクライナで日本語を学んで、それから日本に来て、将来やりたい夢をお持ちだったわけでしょう。戦争は、若い人たちの夢もまた奪うものだということですよね。

イーゴル そうですね。ただ、5年後、10年後の子どもたちの未来をつくる必要があります。前線に近い避難民用の施設を運営していますが、ショックなことにちゃんと読み書きできない子どもたちが出ています。コロナの影響で教育が受けられなくて、それでまた今回の侵略が始まって。

松永 子どもたちが教育の機会を逸してしまう。それは一生に影響を及ぼすことです。今、何百万人のウクライナの人々が国内外で避難していますが、それでも教育を受けることができるように、JICAは遠隔教育の機材を提供しています。将来復興の核になっていくのはウクライナの人々なので、特に子どもたちや若い人々に役に立つような支援を今後も続けていきたいと思っています。

newsweekjp_20240708074258.jpg

JICAが提供したPCで学ぶウクライナの子どもたち

助けるだけではなく、グローバル人材としての活躍の場を

イーゴル 私たちのNPOは日本国内のウクライナ避難民もサポートしていますが、ただサポートするだけではなくてグローバル人材に育てたいという目的があります。彼らをずっとサポートされる人ではなく、何か社会に貢献できる人にしたいのです。教育プロセスの中でカフェを作って、利益はウクライナのために寄付される、ウクライナ人はウクライナのために主体性を持って働ける、カフェやイベントでウクライナ文化も紹介できるという、いろいろなところにWin-Winな仕組みを作りました。

newsweekjp_20240708074542.jpg

(左)ウクライナ地図を刺繍するイベント(右)カフェで提供されているボルシチ(写真はいずれもNPO KRAIANY 提供)

池上 「避難民だから」「かわいそうだから」と助けるだけではなくて、 グローバル人材として育てていくということなんですね。ウクライナの人にしてみても、単に助けてもらうのではなく自分たちがグローバル人材として活躍できた方がいい。そういう場を作っていくのが本当の支援なんだなと思います。

イーゴル JICAは、ノウハウの共有などでウクライナの基盤を支えるような、いろいろな取り組みを行なってくれています。ポーランドに避難するウクライナ人に向けたITスキルの研修を行うなど、グローバル人材に育てるための重要な役割も果たしていただいています。

松永 ITスキル研修もそうなのですが、JICAは日本とウクライナの双方向の関係を重要視して、ウクライナ避難民を受け入れる隣国のポーランドやモルドバなどの国と連携した協力を行っています。そして今JICAはウクライナに対して地雷除去の協力も行っていますが、これはカンボジアと連携した協力です。このように世界中にウクライナ支援の機運を作っていくということも、我々の支援の中の重要なポイントだと考えています。

池上 特にカンボジアではずっと内戦が続いてきて、大量の地雷が残っている。JICAは地雷除去やそのための人材育成の協力を地道に続けてきた。そのノウハウなどが、ウクライナでも役に立っている。そういう形の協力があるんだということですね。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英国王夫妻、トランプ米大統領夫妻をウィンザー城で出

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中