最新記事
米大統領選

バイデンの勇気ある撤退が民主党...そして「ジャーナリズムの世界にも」好機である理由

Wake Up, Democrats!

2024年7月8日(月)13時10分
ベン・マティスリリー
ジョー・バイデン大統領(左)とジル・バイデン夫人(右) REUTERS

ジョー・バイデン大統領(左)とジル・バイデン夫人(右) REUTERS

<現職大統領が辞退して党大会が自由投票になれば、選出過程に注目が集まりトランプを圧倒できる>

これは非常にまずくないか──。6月27日に今期初となる米大統領選テレビ討論会を見ていた民主党支持者の多くが、そんな思いを抱いた。

11月の米大統領選で共和党の大統領候補指名が確実視されるドナルド・トランプ前大統領(78)は、用意していた内容を(虚実はさておき)まくしたてた。一方、再選を狙う民主党のジョー・バイデン大統領(81)は、驚くほど弱々しい声で、言葉に窮する場面も多々見せたのだ。


このため民主党内では、大統領候補を交代させるべきだという主張が急浮上。メディアでは、さまざまな代替候補の名が取り沙汰され始めた。

なかでもよく聞かれるのは、ギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事やピート・ブティジェッジ運輸長官、グレチェン・ウィトマー・ミシガン州知事だろう。何より重視されるのは、「トランプに勝てる候補」であることだ。

その一方で、こうした議論を封じようとする識者や情報筋もいる。バイデンが出馬を取りやめた場合、カマラ・ハリス副大統領以外の人物が大統領候補になることは、あり得ないというのだ。その半分は純粋なハリス支持者で、残りの半分はそれが手続き上の現実論だと考える人たちだ。

確かにハリスは副大統領であり、大統領に何かあった場合の法的な後継者だ。だが、「大統領候補」の地位が「副大統領候補」に引き継がれるというルールは、ない。

アメリカの大統領選は、民主・共和両党とも1月から各州で予備選が開かれ、その結果選ばれた人物を、各州の代議員が党全国大会(今年は共和党は7月、民主党は8月)で投票することにより、党の大統領候補が一本化(指名)され、11月の本選を迎える仕組みになっている。

「ハリス候補」への不安

もし、バイデンが大統領候補を辞退して、各州の代議員を解放すると宣言した場合、つまり自州の予備選で選ばれた候補に投票しなくてもいいこと(自由投票)にした場合、バイデンがハリスを大統領候補に推す可能性はある。

なぜか。こうすれば、本選に向けて党の結束を確認するための党大会が、醜い争いの場に転落するのを防げる。各候補がお互いを攻撃し合えば、その攻撃材料が共和党に利用される恐れもあるからだ。

さらにハリスなら、バイデン&ハリス選挙対策委員会が調達した2億ドル超の資金を直接管理できる。ハリスは、大統領候補の座を目指す可能性があるどの潜在的ライバルよりも、民主党の大口寄付者や党幹部と緊密な関係を築いている。彼らはハリスの人となりを知っていているから、すぐにハリスを支持するだろう。

大統領候補の座を円滑に引き継ぐことができれは、党内の混乱がもたらす党のイメージダウンも防げるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中