アングル:消費財企業、米関税で価格戦略のジレンマ

7月31日、 おもちゃからスニーカー、おむつに至るまで、消費財企業は米関税の影響を和らげるため、顧客の購買力に応じた企業戦略に重点的に取り組んでいる。ニューヨーク州ニューバーグの商店で2023年5月撮影(2025年 ロイター/Jessica DiNapoli)
Helen Reid Dominique Patton Aishwarya Venugopal
[31日 ロイター] - おもちゃからスニーカー、おむつに至るまで、消費財企業は米関税の影響を和らげるため、顧客の購買力に応じた企業戦略に重点的に取り組んでいる。
ドイツのスポーツ用品大手アディダスは米国で新たに高価格帯の商品を売り出す可能性があると発表。米ジーンズ大手リーバイ・ストラウス(リーバイス)は販売促進活動を縮小し、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は来週から値上げする予定だ。
トランプ米大統領が4月2日に「解放の日」と称して貿易相手国への「相互関税」を発表して以来、世界的な大企業はこの数カ月間にわたって高い関税率が収益を圧迫するだろうと警告してきた。
そして今、これらの企業はコスト上昇や米貿易政策を巡る不透明さ、消費者信頼感の低下に伴う打撃を吸収するための価格戦略を明らかにしつつある。
企業の対応は分かれており、売り上げを損なわないでどれくらいの価格引き上げで消費者に転嫁できるのかを慎重に見極めている。
とりわけ経済的・地政学的な不確実性から既に生活費のやりくりが厳しくなっている所得層の消費者は日用品の価格上昇に敏感な一方で、中・高所得層の消費者は価格帯の嗜好品に対して積極的に支出を増やすかもしれない。
米金融大手モルガン・スタンレーのアナリストは「関税は家計消費に対する逆進的な税となり、高所得層よりも低・中所得層に大きな負担を与える」と指摘した。
フランスの化粧品大手ロレアルは価格調整をまだ実施していないが、ニコラ・イエロニムス最高経営責任者(CEO)は香水やフェイスクリームなどの品ぞろえを見直し、消費者が受け入れられる形での価格引き上げを検討している。イエロニムス氏は「あらゆる選択肢を評価しており、状況が落ち着くのを待っている」と語った。
ロイターの世界関税トラッカーによると、約300社のうち少なくとも92社が貿易紛争の影響に伴う価格の引き上げを発表しており、それらのうち約3分の1が消費財関連企業だ。
他社に比べて価格転嫁がやや実施しやすい高級ブランド企業もある。ハンドバッグ「バーキン」で知られるフランスのエルメスは世界で7%、米国では追加で5%値上げし、関税の影響を完全に顧客に転嫁すると表明している。
ドイツの高級スポーツカーメーカー、ポルシェと英高級車メーカー、アストン・マーティンも7月30日、米国で小幅な値上げを発表した一方、業績予想を下方修正して市場のもろさを露呈した。ポルシェのオリバー・ブルーメCEOは「これは一時的な嵐ではない」と述べた。
玩具メーカーのマテル は5月、米国での一部製品の値上げを発表した。ポール・ルー最高財務責任者(CFO)は先週、値上げを実施済みで、年内にはさらなる値上げは予定していないとして「消費者にとってできるだけ価格を安く保つことが目標だ」と言及した。
アディダスのビョルン・グルデンCEOはアナリストに対して「新製品は既存製品よりも価格を引き上げやすい」と表明した。