最新記事
中国政府

特定アカウントのフォロワーを公安部が追跡...中国政府が「インフルエンサー」を狙った取り締まり強化中

CHINA’S GLOBAL REACH

2024年6月11日(火)18時40分
チャウンシー・ジャン
中国の反体制派インフルエンサー

「李先生」と呼ばれている李穎(2022年12月、イタリアで) CRISTIANO CORVINOーREUTERS

<フォロワーを脅し、国外インフルエンサーに圧力。中国政府は、コスト度外視で反体制派つぶしを目指す>

「中国公安部は現在、私のフォロワー160万人を追跡調査している。個人を特定したら地元警察に通知し、召喚する」。李穎(リー・イン)は2月25日、X(旧ツイッター)の自身のアカウントで、こう中国語で警告した。

李のアカウント「李老师不是你老师」(李先生はあなたの先生ではない)は、主に中国本土で検閲され、遮断されたソーシャルメディアのコンテンツを共有している。2022年末頃に、中国全土で市民が白い紙を掲げて政府に抗議した「白紙革命」が起きた際に注目を集め、以来、Xで最もフォローされている政治アカウントの1つとなっている。

「私のフォロワーのリストを調べて個別に調査するという戦略はばかげていると思うが、これがここ数日間で分かった事実だった。彼らは最も初歩的な手法を使っている」と李は投稿。フォロワーに対し、このアカウントのフォローを解除し、安全を優先するよう求めた。

翌日、李は24時間でフォロワー20万人を失ったと明らかにした。

李のメッセージが示すように、中国当局は自国に関するネガティブな情報をコントロールするため、手間はかかるが威圧的な戦術を展開している。標的となったのは李だけではない。国営テレビの中国中央電視台(CCTV)の元ジャーナリスト、王志安(ワン・ジーアン)もXに同様の投稿をした。

こうした警告が、中国語のXアカウントの間で波紋を広げている。中国の政治問題についてコメントしている複数のソーシャルメディアのインフルエンサーも、李の警告以降、XやYouTubeなどのフォロワー数が減少したと報告している。

中国当局は、李のようなインフルエンサーを人海戦術でターゲットにしている。取り締まりにかかるコストはほぼ度外視だ。

狙いは、個人が李のようなインフルエンサーと接触しないように威嚇することにある。また、警察を使って李のアカウントなどのフォローを解除するよう個人に求めることで、YouTubeをはじめとするプラットフォームで収入を得るため購読者数に依存しているインフルエンサーに経済的圧力をかけようとしている。

情報操作に年間数十億ドルを費やす中国政府

李は2月28日にYouTubeに投稿した動画で、自身のフォロワーに対する取り締まりによって、中国語を使うソーシャルメディアのコンテンツクリエーターに大きな影響が及んでいると述べた。彼らのフォロワーが、YouTubeチャンネルなどを購読することをますます恐れるようになっているからだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユニクロ、C・ブランシェットさんとブランドアンバサ

ビジネス

アングル:夏枯れ下の円金利上昇、政局や金融政策に不

ワールド

アングル:ロシア、増税と歳出削減を準備か 軍事費高

ワールド

プーチン氏が会談拒否なら、米の「強い対応」望む=ゼ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 4
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中