最新記事
密入国

「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...SNSで犯罪組織に応募

LIFE OF CRIME

2024年5月30日(木)14時00分
ニック・モルドワネク(本誌政治担当)

メキシコ国境テキサス州「ローンスター作戦」

メキシコとの国境付近でテキサス州の「ローンスター作戦」により拘束されたグループ(21年3月) JOHN MOORE/GETTY IMAGES

全米の保安官たちは、国境の密入国問題についてジョー・バイデン大統領と政権上層部に直接伝える機会を求めてきた。ところが、ホワイトハウスはいまだに、保安官たちを招いて意見を聞いていないという。バイデンは、アメリカ現代史上初めて国境警備についての対話に臨もうとしない大統領だと、ダネルズは批判する。

「本腰を入れて一致結束した対策とメッセージを打ち出し、法律の執行を徹底し、未成年者に大きな影響を及ぼすソーシャルメディアの問題に対処しない限り」問題は続くだろうと、ダネルズは言う。

大がかりなネットワーク

コーチス郡のブライアン・マッキンタイア検事が本誌に示したデータによれば、同郡検察が昨年1~11月(集計済みの最新データ)に密入国関連の容疑で訴追した未成年者は33人。そのうち20人が成人として扱われた。22年も1年間で49人が訴追されている(38人が成人扱い)。

「ほかの地域から犯罪者がたくさん集まってくる」と、マッキンタイアは言う。「犯罪者の観光名所のようになってしまった。メーン州、オレゴン州、(イリノイ州の)シカゴなど、ありとあらゆる場所からやって来る」

本誌の取材に応じた多くの法執行機関関係者と同様、マッキンタイアは、若い世代が密入国に関わるケースが急増している要因として、ソーシャルメディアを挙げる。画像・動画投稿アプリの「スナップチャット」などのソーシャルメディアで流れてくる広告の影響が大きいというのだ。

ある広告では大量の札束の画像を映し出し、アリゾナ州のダグラスやシエラビスタなど所定の場所まで密入国者を運べば、簡単にその金が手に入るとうたっている。

「密入国者1人をできるだけ早く、途中で捕まらずに(アリゾナ州の)フェニックスまで車で運ぶことに成功した場合、1500ドルのカネを受け取れると言われれば、そのリスクをいとわない人は多い」と、マッキンタイアは指摘する。

密入国ビジネスを手がける犯罪組織は、密入国しようとする人から1人当たり6000~8000ドル(メキシコから入国する場合)の料金を徴収する。密入国者は料金の一部を前払いし、残りは借金として背負い、アメリカ入国後に返済する。その結果として、密入国者は「年季奉公人」のような状態に置かれると、マッキンタイアは言う。

フェニックスの地元テレビ局KTVK/KPHOによると、昨年11月には、同州ギルバート出身の18歳とメサ出身の19歳が身柄を拘束された。容疑は、5人の人物の密入国を助けたことだ。

同じフェニックスの地元メディアの12ニュースによると、今年3月にもコーチス郡で15歳、16歳、18歳の3人が密入国に関与した容疑で逮捕されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 6
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 7
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中