最新記事
密入国

「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...SNSで犯罪組織に応募

LIFE OF CRIME

2024年5月30日(木)14時00分
ニック・モルドワネク(本誌政治担当)
入国者に食べ物を提供する慈善団体(今年2月、カリフォルニア州サンディエゴ) QIAN WEIZHONGーVCG/GETTY IMAGES

入国者に食べ物を提供する慈善団体(今年2月、カリフォルニア州サンディエゴ) QIAN WEIZHONGーVCG/GETTY IMAGES

<ソーシャルメディアの広告を見て、軽い気持ちで犯罪組織の「求人」に応募する若者たち>

「人間の密輸」に手を染めるアメリカのティーンエージャーが今、急激に増加している。

正規の手続きを経ずにアメリカに移住しようとする人たちを非合法な形で入国させたり、既に不法入国している人たちを運んだり、かくまったりしているのだ。法執行機関の関係者の話によると、そうした若者たちの最大の動機はカネだという。

密入国は、成り済まし、文書偽造、福祉の不正受給、ギャング活動、金融詐欺、さらにはテロリズムなど、さまざまな犯罪への入り口といわれることが多い。密入国の増加をめぐっては、バイデン政権への風当たりが強まっている。

メキシコと国境を接するテキサス州は2021年3月、「ローンスター作戦」と称して強硬な密入国対策に乗りだした。今年4月の発表によると、この作戦によってこれまで3年間に身柄を拘束された密入国者数は50万3800人以上。逮捕者数も4万400人を上回る(このうち3万6100人以上が重罪)。

同州公衆安全局が本誌に示したデータによると、今年1月には密入国を手助けした疑いで数百人が逮捕された。被疑者の年齢はさまざまで、1960年代生まれの人物もいるが、2008年生まれも含まれている。

昨年11月には、同州ダラスのティーンエージャー2人が密入国関与の容疑で逮捕された。そのうちの1人ジョナサン・ロドリゲス(17)はケーブルテレビ局ニューズネーションに対し、この件で2人に提示された報酬は1300ドルだったと語っている。ロドリゲスは未成年ながら、成人扱いで訴追された。

テキサス州エルパソの地元テレビ局KTSMによると、その1カ月後には、エルパソで15歳の少年が身柄を拘束されて訴追された。5人の密入国者を車両で運んだ容疑だ。

密入国に加担する犯罪組織メンバーには10代の若者も少なくないと、テキサス州選出のテッド・クルーズ上院議員(共和党)は本誌に語っている。

「悲劇的な話だが、メキシコでもアメリカでも、多くのティーンエージャーが犯罪組織に利用されて、犯罪の実行役を担わされている」

同議員に言わせれば、バイデン政権は連邦レベルの密入国対策を実行せず、「意図的に」状況を悪化させているという。

テキサス州選出共和党テッド・クルーズ上院議員

クルーズはバイデン政権が事態を悪化させていると批判する BILL CLARKーCQ-ROLL CALL/GETTY IMAGES

メキシコとの国境に近いアリゾナ州南東部のコーチス郡は、昔から密入国の舞台になってきた。国境付近の町で密入国は目新しい現象ではないと、同郡のマーク・ダネルズ保安官は本誌に語る。

「この3年間とそれ以前の違いは、規模の大きさだ。今(密入国の)件数は史上最悪の水準に膨れ上がっている。しかも対策は取られていないし、対策を講じようという姿勢も見られない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国中古住宅価格、4月は前月比0.7%下落 売り出

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中