最新記事
イラン

イランのライシ大統領と外相が死亡、国境近くでヘリ墜落...強硬派でハメネイ師の後継候補だった

2024年5月20日(月)19時35分
ロイター
イラン

5月20日、イラン当局者は、ライシ大統領とアブドラヒアン外相が、搭乗していたヘリコプター墜落で死亡したとロイターに述べた。写真は救出活動に当たる救助隊。20日に公開された動画から抜粋。提供写真(2024年 ロイター/Iranian Red Crescent Society)

イランのライシ大統領(63)とアブドラヒアン外相が搭乗していたヘリコプターが19日、アゼルバイジャンとの国境近くの山岳地帯に墜落し、両氏とも死亡した。イラン国営メディアが20日に伝えた。

吹雪の中、夜を徹して捜索した結果、20日未明に炎上して燃え尽きた残骸が発見された。

政府高官がロイターに明らかにしたところによると、搭乗者全員が死亡。マンスーリ副大統領もその後、声明でライシ氏の死亡を確認した。

モハンマド・モフベル第1副大統領が大統領に就任する見通し。

国営テレビは墜落原因に触れていない。現場の映像は山頂に激突したことを示していると伝えた。

国営通信IRNAによると、ライシ氏が搭乗していたのは米国製ヘリ「ベル212」。

ライシ氏は、アゼルバイジャンとの共同プロジェクトであるダムの開所式に出席するため国境地域を訪れていた。

インド、イラク、パキスタン、欧州連合(EU)、ロシアなど周辺諸国は哀悼の意を表明。

イランが支援するイスラム組織ハマス、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イエメンの親イラン武装組織フーシ派もライシ氏を称え、弔意を表した。

米ホワイトハウスはバイデン大統領が事故の報告を受けたと発表した。欧州連合(EU)は衛星マッピング技術を提供。中国は深刻な懸念を表明した。

<ハメネイ師の後継者とされた強硬派>

イランは核開発計画やウクライナでの戦争を続けるロシアとの軍事関係深化を巡り、国際社会から圧力に直面している。また、昨年10月にハマスがイスラエルを急襲し、パレスチナ自治区ガザへの攻撃が始まって以来、中東全域でイランに近い組織が絡む戦闘も続いている。

ライシ氏は2021年に大統領に選出され、道徳関連法の強化を命じ、反政府デモを暴力的に弾圧したほか、主要国との核協議で強硬な姿勢を示してきた。

イラン最高指導者のハメネイ師は先に、国政に混乱は生じないと述べた。

ライシ氏は85歳になるハメネイ師の後継者の有力候補と見なされ、ハメネイ師もライシ氏の主要政策を支持していた。現実主義的だったロウハニ前大統領の体制とは異なり、現在はあらゆる権力部門が強硬派の支配下にある。

ただ、宗教指導者による統治への抗議と西側の制裁を受けるイラン経済の立て直し失敗で、ライシ氏の立場は揺らいでいるとの見方も出ていた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも

ビジネス

米バークシャー、アルファベット株43億ドル取得 ア

ワールド

焦点:社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中