最新記事
ロシア

情報錯綜するイリューシン76墜落事件、直前に大きな物体

Mystery as large objects seen falling out of Russian Il-76 during crash

2024年1月25日(木)12時47分
イザベル・ファン・ブリューゲン
ロシア空軍のイリューシン76

モスクワ地域の上空を飛ぶロシア空軍のイリューシン76(2016年) Media_works-Shutterstock

<本当に65人のウクライナ人捕虜が乗っていたのか、それともロシアの防空ミサイルS300を満載していたのか、ウクライナが勘違いで撃墜したのか、それとも事故か>

ウクライナと国境を接するロシア西部のベルゴロド州で1月24日、ロシア軍の大型輸送機「イリューシン76(IL76)」が墜落したが、ロシアの治安情報に詳しいテレグラム・チャンネル「VChK-OGPU」は、目撃者から得た情報として、墜落直前にIL76から「奇妙な」物体が放り出されたと伝えた。

【動画】情報錯綜するイリューシン76墜落の瞬間と救いのない墜落現場

ウクライナ内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問も、墜落する前にIL76から「幾つかの大きな物体」が落下したと述べた。この「物体」が何なのかは分かっていない。ゲラシチェンコはまた、報道によれば墜落現場はすぐに封鎖され、地元住民は現場に近づくことを禁じられたようだとも述べた。

 

墜落の原因は分かっていない。ロシア側は、墜落したIL76は捕虜交換のためにウクライナの捕虜(ウクライナ軍の兵士)を乗せてベルゴロドに向かっていたと主張。IL76を撃墜したのはウクライナの「テロ行為だ」と非難している。

ロシア国防省は声明を発表し、「ウクライナの指導部は、自国軍の兵士らが24日、従来どおりの手順で捕虜交換のため軍用輸送機でベルゴロドに輸送されることは十分に認識していたはずだ」と主張。「事前の合意に基づき、捕虜交換はこの日の午後にロシアとウクライナの国境地帯にあるコロチロフカ検問所で行われることになっていた」と述べた。

捕虜交換は「現在は行われていない」とウクライナ

これに先立ちロシア国防省は、墜落したIL76には捕虜となっていたウクライナ軍兵士65人、ロシア人の乗員6人とロシア軍の兵士3人が乗っていたと明らかにしており、声明で次のように述べた。「今回のテロ行為で、ウクライナの指導部はその正体をさらけ出した。彼らは自国民の命を軽視したのだ」

ロシア語の独立系ニュースメディア「ザ・インサイダー」は、捕虜交換の手順に詳しい情報筋の発言を引用し、墜落したIL76にはロシアの捕虜となっていたウクライナ軍の兵士たちが乗っていたと伝えた。

ウクライナ国防省情報総局のアンドレイ・ユソフ報道官は、ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーのロシア語サービス「ラジオ・スボボダ」に対して、捕虜交換は以前は墜落の日と同じ水曜日に行われていたものの、「現在は行われていない」と述べた。

本誌はこの件についてウクライナとロシアの当局にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

ウクライナのニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」は当初、情報筋の発言を引用する形で墜落は「ウクライナ軍の仕業」だと報じたが、その後「別の情報筋はこの情報を確認していない」と述べた。また同サイトは捕虜については言及せず、墜落したIL76は「ロシアの地対空ミサイルシステムS300を輸送していた」とするウクライナ軍の情報筋の発言を引用したが、その後この記事を削除した。

BAT
「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世界の構築を共に
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

デンマーク、米外交官呼び出し グリーンランド巡り「

ワールド

赤沢再生相、大統領発出など求め28日から再訪米 投

ワールド

英の数百万世帯、10月からエネ料金上昇に直面 上限

ビジネス

英生産者物価上昇率、6月は2年ぶりの高水準
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中