最新記事
中東

追悼式典での爆破テロに「報復」を誓うイラン、戦火は中東で拡大か

IRAN PLEDGES “FIRE & FURY”

2024年1月10日(水)20時23分
トム・オコナー(外交問題担当)

240116P26_IRN_02.jpg

爆発が起きた直後の現場(ケルマン、1月3日) WANAーREUTERS

イスラエルは長年、敵陣や敵国内に潜入して秘密工作を行うことで知られてきた。

イランの核開発に関わった軍の高官や科学者の暗殺、さらには開発に必要な装置の破壊などは、イスラエルの情報機関の工作員やその協力者の仕業とみられている。

さらにイランは長年にわたり、ISやイランの反体制組織ムジャヒディン・ハルク(イスラム人民戦士機構、MKO)、アラブ系やクルド系をはじめとするさまざまな分離独立派武装勢力など、非国家主体による激しい攻撃にさらされてきた。

MKOのシャヒン・ゴバディ報道官は本誌に、同組織は「ケルマンで今回のような行為はしていない」と答えた。

イランの最高指導者アリ・ハメネイは、X(旧ツイッター)の公式アカウントで今回の攻撃を激しく非難している。

「イラン国家の邪悪で不道徳な敵が再び悲劇を引き起こし、ケルマンの殉教者の墓のかぐわしい雰囲気の中で、私たちの親愛なる多くの人々を殉教させた」

「冷酷な罪人らは、偉大な司令官であった殉教者ガセム・ソレイマニの墓を訪れた人々の愛と愛情を目の当たりにして我慢ならなかった」

ハメネイは、今回の攻撃の背後にいる人々に「痛烈な打撃と相応の報復を与える」とも述べている。

「アメリカを地域から追放」

2020年1月に暗殺された当時、ソレイマニはイランで最も有名な軍人であり、20年にわたり地域内外の関係者と複雑な協力関係を築いていた。

イランが支援する中東各地の武装組織のネットワーク「抵抗の枢軸」のメンバーは長年、アメリカとイスラエル、サウジアラビアなどイスラム教スンニ派君主国、アルカイダやISなどイスラム過激派組織に関連する標的を狙ってきた。

19年にはイラクの民兵組織と米軍が一触即発の状態となり、両国の緊張が高まるなかで、ドナルド・トランプ米大統領(当時)はソレイマニの殺害を命じた。

イランは直ちに隣国イラクの米軍の拠点に弾道ミサイルを浴びせ、アメリカを地域から追放すると誓った。

そして今、ジョー・バイデン米大統領はガザの戦闘でイスラエルを支持し、米軍はイラクとシリアで再びロケット弾やドローン(無人機)の攻撃を受けている。

一方、イエメンの親イラン武装組織「フーシ派」は昨年11月以降、イスラエルに関係があるとする商船をイエメン近海で相次いで攻撃。

イスラエル南部に向けてミサイルやドローンも発射し、新たに結成されたアメリカ主導の海上連合を挑発し続けている。

米国務省のマシュー・ミラー報道官は1月3日の記者会見でケルマンの爆破事件について、米当局は「報道を注視している」が「独自に提供できる情報は持っていない」と述べた。

ミラーはさらに、アメリカとイスラエルは事件と関係がないことを強調した。

「第1に、アメリカは一切関与しておらず、それに反するいかなる示唆もばかげている。第2に、イスラエルがこの爆発に関与していると信じるいかなる根拠もない」

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独輸出期待指数、6月は悪化 米関税巡る不透明感で=

ワールド

米政権、メリーランド州連邦地裁を提訴 移民送還の阻

ビジネス

ルネサス、経営目標達成を5年先送り

ワールド

中国、フェンタニル原料を規制対象に追加 米の要求に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 5
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 6
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 9
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 10
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中