最新記事
韓国社会

韓国国会「犬食禁止法」を可決成立 それでも犬たちの悲劇は続く?

2024年1月9日(火)22時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
檻に入れられた犬たち

食用として檻に入れられた犬たち Reuters

<国際的に批判を浴びていた韓国の「食文化」がいよいよ消え去るか?>

長年、韓国内で社会的な議論を呼んできた犬食の賛否をめぐる問題が、ついに決着を見る日が来た。1月9日の韓国国会では、食用を目的に犬を屠殺したり飼育·繁殖することを禁止する法案を可決した。KBS、NEWSIS、YTNなどの韓国メディアが報じた。

グーグルでも高い人気の韓国料理だが......

近年、K-POPや韓国ドラマが世界的に人気を集めるなか、韓国料理も世界中から注目されるようになり、グーグルが発表した2023年の年間検索ランキングでレシピ部門の1位は韓国料理のビビンパが獲得している。そんな世界的に人気を集める料理がある一方で、欧米を中心に非難を浴びていた料理が「補身湯(ポシンタン)」などの犬肉を使った料理だ。

もっとも世界中から批判されるほど犬食が韓国でメジャーかといえば、そうではない。1988年のソウルオリンピック開催を受けて、法律上は「補身湯(ポシンタン)」は禁止されるようになった。また若い世代では犬はペットとして愛すべき家族同然の存在という認識が広まったこともあって、現在ではソウルでは犬肉を提供する店も少なくなったという。

こうした流れは地方でも同じだ。かつては全国3大犬肉市場と呼ばれた城南市の牡丹市場が2018年に、釜山市亀浦家畜市場も2019年に閉鎖され、残っているのは大邱市の七星市場だけとなった。七星市場でも犬肉のみ販売する食堂5店、犬肉と他の保養食を一緒に販売する飲食店が4店、犬肉を漢方薬に漬け込んだケソジュなどを販売している健康院と呼ばれる店が4店。訪れる客は60代以上の高齢者ばかりで、ひっそりと営業している状態だ。

「犬食用禁止法」違反は懲役3年

今回、韓国国会で成立した法律は「犬食用禁止法」と呼ばれている(正式名称は「犬の食用目的の飼育屠殺及び流通等の終息に関する特別法」)。具体的には食用目的で犬を屠殺した場合3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金、また食用目的で犬を飼育したり、あるいは繁殖や流通させても2年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金という内容になっている。食用の犬に関わる業種すべてを包括的に取り締まる内容となっており、これが施行されれば韓国の犬食はなくなると予想される。

また法案公布後、犬飼育農場主、犬食用屠畜·流通商人または犬食用食品接客業者は施設名称、住所、規模および営業事実などを公布日から3カ月以内に地方自治体首長に申告しなければならない。国または地方自治体は、これらの業者に対して廃業や転業などに必要な支援を行うことも法律は規定している。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

アップル、新たなサイバー脅威を警告 84カ国のユー

ワールド

イスラエル内閣、26年度予算案承認 国防費は紛争前

ワールド

EU、Xに1.4億ドル制裁金 デジタル法違反
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中