最新記事
中国軍

「侵略の発想は中国のDNAにない」──豪艦船に音波照射した中国高官がシドニーで「攻撃」を正当化

Aggression Not in China's DNA, Senior Diplomat Says

2023年11月30日(木)16時35分
ミカ・マッカートニー
中国空母「遼寧」と艦載機

中国空母「遼寧」と艦載機(2018年4月18日、東シナ海での演習中) REUTERS

<アルバージーニー豪首相が7年ぶりの訪中で関係改善のジェスチャーを見せた矢先、国際水域で複数の豪兵士を負傷させた危険行為に対する言い分>

「『侵略』は中国のDNAにない」――中国の高官が、中国の軍備増強や紛争海域での危険な振る舞いを批判する声にこう反論した。

<動画>オーストラリアとフィリピン合同演習の上空を旋回する2機の中国戦闘機


中国共産党・中央対外連絡部長の劉建超は11月28日、訪問先のオーストラリアで出席したイベントで、中国政府の目標は繁栄と開発だと語った。

劉はシドニー工科大学豪中関係研究所が主催したイベントで、「侵略と拡大は我々のDNAにない。中国が開発を実現するために必要なのは、紛争や戦争ではなく平和と安定だ」と述べた。

2週間前には、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相(労働党)の7年ぶりに訪中し、スコット・モリソン前首相(自由党)が新型コロナウイルスの発生源を中国と示唆して以降急速に悪化していた豪中関係は改善するかに見えた。

だがその善意も、中国海軍の駆逐艦がオーストラリア海軍の艦艇に強力な音波を照射したとオーストラリア政府が非難して打ち砕かれた。

「監視などの対応は当然の行為」と主張

オーストラリア国防省によれば、11月14日。日本近海の国際水域を航行中だったオーストラリア海軍のフリゲート艦「HMASトゥーンバ」に中国海軍の駆逐艦「寧波」が接近。オーストラリア側は潜水作業中であることを通知し、接近しないように告げたにもかかわらず、中国側は接近を続けたという。

劉はこの件に関し、もしオーストラリアの海域近くに中国海軍の艦船が表れたら、「(オーストラリアも)自国の艦船を現場海域に派遣して監視し、相手を特定し、危険が及ばないよう手を尽くのが当然だろう」と述べて、中国側の対応を正当化した。

「些細な出来事も、適切な対処しなければエスカレートしてしまいかねない」と述べ、そうなれば、せっかく改善しつつある豪中間系に水を差しかねない、と述べた。

今回だけではない。2022年2月には、オーストラリアとインドネシアを隔てるアラフラ海で、オーストラリアの哨戒機が中国海軍の艦船からレーザー照射を受けたとオーストラリア政府が明らかにした。同年5月には、中国軍の戦闘機が南シナ海上空を飛行中のオーストラリアの哨戒機に「チャフ」を放出して危険にさらしたと発表。チャフは、アルミなどの小さな金属片で、航空機を飛行不能に陥らせかねない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中