最新記事
ウクライナ戦争

体に「破片が刺さったまま」の兵士を再び前線へ...ロシア軍将校が語る、クラスター弾搭載ATACMSの威力と自軍の窮状

Russian Troops 'Bled Dry' by ATACMS Cluster Bombs: Storm-Z Instructor

2023年11月15日(水)17時20分
イザベル・ファン・ブリューゲン
ATACMS

M270 MLRSから発射されるATACMS(2006年5月) Public Domain

<アメリカが供与した長射程ミサイル「ATACMS」を使ったウクライナ軍の攻撃が、苦戦する前線のロシア軍部隊にさらなる打撃を与えている>

アメリカがウクライナ軍に供与した長射程の地対地ミサイルATACMS(エイタクムス)が戦場で使用され、ロシア軍部隊は「疲弊した」状態になっている、とロシア軍将校が語った。

■【動画】「まさに壊滅的!」米ミサイルATACMSから飛散したクラスター弾による爆撃の瞬間

軍規に背いた兵士や元受刑者を集めたといわれるロシア軍懲罰部隊「ストームZ」の教官を務めるスビャトスラフ・ゴリコフは14日、自身のテレグラム・チャンネルで、この兵器が戦闘中の部隊に与えている影響について概説した。

ゴリコフによれば、ATACMSは160キロ以上離れた標的にも届くため、膨大な数の死傷者が出ており、ロシアの作戦遂行に支障をきたしているという。本誌はゴリコフのコメントを独自に確認できていない。

アメリカは今年9月、ATACMSをウクライナに供与することに合意した。ATACMSは射程距離が長いため、アメリカが提供する高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)やM270多連装ロケットシステムのミサイルよりも遠くにある標的を攻撃することができるようになる。

ウクライナ軍は10月、ATACMSのクラスター弾頭型ミサイルを使って、ザポリージャ州ベルジャンスク市とロシア支配下のルハンスク市にあるロシア軍基地を攻撃し、ロシアのヘリコプターを10機以上破壊した。ウクライナ戦争でこの兵器が使用されたのはこれが初めてだった。

歩兵部隊は傷だらけ

「現在、歩兵部隊のかなりの部分がクラスター弾に打ちのめされている。多くのマイナスの要因が重なっている」とゴリコフは説明する。「歩兵は戦場で直接的にひどい打撃を受け、戦闘任務の遂行に支障をきたしている。これに加えて、避難のための後方支援にも過度の負担がかかり、軍の医療インフラにも負荷がかかりすぎている」

ゴリコフによれば、ロシア軍部隊は爆弾の破片が体に刺さったままの状態でウクライナの前線に戻されているという。本誌はロシア国防省に電子メールでコメントを求めた。

戦場の前線では急激な変化はなく、ウクライナ軍が躍進しているわけでもないが、ロシア軍はこの戦争でほとんど成功していない、とゴリコフは述べた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はATACMSについて、ロシア軍にとって「新たな脅威」だが、「われわれはもちろん、攻撃を撃退することができるだろう」と語った。

ロシア国営タス通信が報じたところでは、プーチンはATACMSが「前線の状況を変えることはできないだろう。不可能だ」と発言した。

ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、アラスカで3者会談にオープン ウクライ

ビジネス

米、エヌビディアに中国向け「H20」輸出許可付与=

ワールド

欧州、ウクライナの利益守る必要性強調 米ロ会談控え

ワールド

アラスカにゼレンスキー氏招待も、米が検討=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 2
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段の前に立つ女性が取った「驚きの行動」にSNSでは称賛の嵐
  • 3
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中印のジェネリック潰し
  • 4
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 5
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    メーガン妃の「盗作疑惑」...「1点」と語ったパメラ・…
  • 10
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中