最新記事
科学

次の地球生物の大量絶滅は「超酷暑」が原因...新たな超大陸「パンゲア・ウルティマ」とは? 最新研究より

The Next Mass Extinction

2023年10月20日(金)14時52分
ジェス・トムソン(本誌科学担当)
太陽

地殻変動と太陽が招く地球の超温暖化を哺乳類は生き残れるのか PASCAL ROSSIGNOLーREUTERS

<スーパーコンピューターの気候モデルが描き出す、哺乳類の大半が地球から姿を消す恐怖のシナリオとは?>

次に地球上で起こる生物の大量絶滅は、気温の劇的な上昇が原因になるかもしれない。そして、絶滅種の中には人類も含まれる可能性がある。

学術誌ネイチャー・ジオサイエンスで発表されたスーパーコンピューターを使った気候モデルに関する論文によれば、地球の気温は2億5000万年後には生存不可能な水準まで上昇するため、哺乳類のほとんどが絶滅する恐れがあるという。

新たな超大陸が赤道近くに形成されると予測されていることも、状況をさらに深刻化させる要因だ。

人類もこの絶滅シナリオの影響を大きく受ける。「人間には一般的に乗り越えることのできない熱ストレスの限界がある」と、論文の主著者で英ブリストル大学上級研究員のアレクサンダー・ファーンスワースは本誌に語った。

「湿球温度(乾湿球湿度計の湿球が示す温度、気温と湿度の両方を反映する)が35度(最近の研究では31度とも)を超える中に6時間以上いると生命に関わる可能性がある。同様に、乾球温度(いわゆる気温)が40度を超え、湿度は低いという状態が一定時間、続く場合も命に関わる」

「テクノロジーを勘定に入れれば、空調付きで環境を制御したシェルターを建設すれば生存は可能だ。だが、食糧生産を行う施設も建てなければならないだろう」と彼は言う。

気温上昇が予測される要因は2つ。1つは地殻運動により火山の噴火が増えることによる大気中の二酸化炭素量の増加。もう1つの要因は太陽放射の増加(約2.5%)だ。

「われわれの研究では、地球の温度は現在より10~15度高くなり、陸上だけを見ると現在の平均より25~30度も高くなる可能性がある」とファーンスワースは言う。

熱帯にできる新・超大陸

研究によれば、さらに問題を大きくするのが新たな超大陸「パンゲア・ウルティマ」の形成だ。この超大陸で、哺乳類が生息できるのは陸地の8~16%程度にとどまるだろう。超大陸は赤道周辺に位置するとみられるからだ。

「大陸の位置が変わって1つの超大陸になるというだけでも、地表温度は大幅に上昇する。これは主に、陸地のほとんどが現在で言う熱帯地方に集まるからだ」と、ファーンスワースは言う。

「その上2億5000万年後、太陽は今より約2.5%明るくなり、地球にさらなるエネルギーをもたらす。地殻変動で大陸が集まって超大陸が形成されることで、火山から大気中へのガス放出も増える」

こうした気温上昇は人類を含む哺乳類にとっては特に脅威だ。というのも、哺乳類は暑さよりも寒さに耐えられるように進化してきている。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、3会合連続で金利据え置き 総裁「関税動

ワールド

トランプ氏、インド関税25%と表明 ロ製兵器購入に

ワールド

トランプ氏、関税発動期限の延長否定 8月1日は「揺

ワールド

トランプ氏、FRBに利下げ改めて要求 「第2四半期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    13歳も72歳も「スマホで人生が終わる」...オンライン…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中