最新記事
ストライキ

UAWがビッグスリーに求める週4日制に理はあるか

How UAW Strike Could Push America to 4-Day Workweek

2023年9月19日(火)16時47分
オマル・モハメド

デトロイトの通りを行進する自動車メーカーの従業員たち(9月15日) REUTERS/Rebecca Cook

<ビッグスリー揃い踏みという史上初のストライキに突入した全米自動車労組(UAW)は大幅賃上げを要求しているだけではない。子供を育て、人生を楽しみ、親を看取ることができる「普通の生活」だ>

全米自動車労組(UAW)が、米国の三大大自動車メーカー、いわゆる「ビッグスリー」に対して実施している歴史的なストライキは、すでに4日目に突入している。UAWの主な要求のひとつが、UAW幹部が言う「ワークライフバランスの向上」を達成するための、週4日労働の実現だ。

フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、ステランティス(傘下にクライスラーがある)で働くおよそ1万3000人の労働者はストライキに入っている。3社の従業員が一斉にストライキを起こすのは史上初のことだ。労働者側は、賃上げ、物価上昇に応じた生活費手当の支給、そして公平な利益分配制度などを要求している。

UAWは同時に、ワークライフバランス向上のための週32時間労働を、週40時間労働のときと同じ賃金で実現させようとしている。

新しい休日を恩に着せる企業

週4日労働をめぐる議論はここ数年、世界中で盛り上がっている。労働者たちがより柔軟な働き方を求めるようになったためだ。

アメリカでは、国際従業員給付制度財団(IFEBP)の調査対象になった企業のおよそ20%が、週4日労働について、検討しているか制度化したと回答した。新型コロナウイルス感染症の流行のさなかに従業員が様々な労働形態を経験したこともこの動きを後押しをしてしたという。

IFEBPのコンテンツ担当バイスプレジデントを務めるジュリー・スティッチは、「パンデミック後、一部の雇用主は、新規採用の促進や従業員の定着率向上などの必要から、週4日労働を導入しつつある」と話す。「しかしほとんどの雇用主は、ビジネス上の目標達成と週4日労働を両立する方法を見つけ出せずにいる」

週労働時間を短縮すると生産性を損なわずにストレスを軽減できる、という研究結果もある一方で、企業はなかなかそれを導入できない。

週4日労働に関するニュージーランドのある研究では、従業員は休日が1日増えるのを評価しており、それが健康・幸福に貢献していると話す人もいた。しかし、その増えた休日は、経営側からは贈りものと見なされ、残った4日間でのプレッシャーが大きくなったという。
「ある企業幹部は、従業員が「100%の仕事を80%の時間に押しこもうとした」結果として、「一部の仕事の質が低下した」と受け止めていた」

 

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

SNS情報提出義務化、米国訪問に「委縮効果」も 業

ビジネス

三菱UFJFG社長に半沢氏が昇格、銀行頭取は大沢氏

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、米雇用統計控え上値重

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中