とはいえ与党ペロン党(正義党)のアルベルト・フェルナンデス政権がすさまじく無能なのは否定できない。インフレ率は150%に迫り、景気は低迷し、中央銀行の外貨準備高は70億ドルマイナスだ。ペロン党政権は腐敗も根深く、2016年には元閣僚のホセ・ロペスが汚職で得た900万ドルを修道院に隠そうとして現行犯逮捕された。

問題の解決策をミレイは持ち合わせていない。例えば鳴り物入りの「ドル化」だが、アルゼンチンとアメリカは単一通貨を持つほうがメリットの大きい「最適通貨圏」に属してはいない。ドル化に踏み切ればFRB(米連邦準備理事会)の政策に振り回され、経済的ショックも懸念される。

現在流通しているペソを買い取るには400億ドルかかるが、その余裕はない。ミレイ支持の経済学者はドルを海外から借りればいいと主張する。だが前倒しで返済を迫られればたちまちマネーサプライは消え、アルゼンチンは大恐慌に陥るだろう。

とはいえ選挙の争点は公約の健全性ではなく、「最も憤慨していて最も注目を浴びるのがうまく、支配層に蹴りを入れて追い出すと大見えを切れる候補者は誰か」。この3点においてミレイはダントツに強い。その強さが彼を最有力候補にしたのだ。

©Project Syndicate

230912P16NW_Pelasco_130SQ.jpgアンドレス・ベラスコ

ANDRES VELASCO

経済学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス公共政策大学院学部長。コロンビア大、ハーバード大教授を歴任。2013年にはチリ大統領選に立候補している。
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