最新記事
南米

極右リバタリアンの皮をかぶったポピュリスト...アルゼンチン大統領選ミレイ候補、ダントツの強さの訳

MORE OF THE SAME

2023年9月6日(水)18時25分
アンドレス・ベラスコ(元チリ財務相)

とはいえ与党ペロン党(正義党)のアルベルト・フェルナンデス政権がすさまじく無能なのは否定できない。インフレ率は150%に迫り、景気は低迷し、中央銀行の外貨準備高は70億ドルマイナスだ。ペロン党政権は腐敗も根深く、2016年には元閣僚のホセ・ロペスが汚職で得た900万ドルを修道院に隠そうとして現行犯逮捕された。

問題の解決策をミレイは持ち合わせていない。例えば鳴り物入りの「ドル化」だが、アルゼンチンとアメリカは単一通貨を持つほうがメリットの大きい「最適通貨圏」に属してはいない。ドル化に踏み切ればFRB(米連邦準備理事会)の政策に振り回され、経済的ショックも懸念される。

現在流通しているペソを買い取るには400億ドルかかるが、その余裕はない。ミレイ支持の経済学者はドルを海外から借りればいいと主張する。だが前倒しで返済を迫られればたちまちマネーサプライは消え、アルゼンチンは大恐慌に陥るだろう。

とはいえ選挙の争点は公約の健全性ではなく、「最も憤慨していて最も注目を浴びるのがうまく、支配層に蹴りを入れて追い出すと大見えを切れる候補者は誰か」。この3点においてミレイはダントツに強い。その強さが彼を最有力候補にしたのだ。

©Project Syndicate

230912P16NW_Pelasco_130SQ.jpgアンドレス・ベラスコ
ANDRES VELASCO
経済学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス公共政策大学院学部長。コロンビア大、ハーバード大教授を歴任。2013年にはチリ大統領選に立候補している。

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ・メディア、暗号資産含む投資商品展開へパー

ビジネス

仏中銀総裁、IMF・世銀維持の重要性主張 「焦点絞

ビジネス

米インテル、20%超の人員削減を今週発表へ=ブルー

ビジネス

GPIFのオルタナ投資促進など提言=自民資産立国議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 8
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 9
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中