最新記事
世界が尊敬する日本人100

『スラダン』を生んだ井上雄彦は、それでも中国「80後」世代の神

Takehiko Inoue

2023年9月6日(水)12時25分
府川葵(ライター)

ミステリアスな原作者

inouetakehiko-web02.jpeg

井上雄彦氏 LAURENT KOFFELーGAMMA-RAPHO/GETTY IMAGES


映画が公開される4月に入ると、宣伝の前哨戦が始まり、SNS上でスラムダンク関連のつぶやきが目立ち始めた。

「午前0時の上映、絶対応援しに行くよ〜」「われわれ80後の青春がよみがえった〜」「湘北応援しに行くぞ〜」。街中にはスラムダンクのラッピングバスも走り回り、ショッピングモールの液晶大画面には予告編が流れる。4月15日には北京大学体育館で先行上映され、中国人声優が舞台挨拶した。

80後だけでなく、今回の映画でスラムダンクを初めて知ったZ世代の若者も多いが、 それは中国なりの大胆な試みの成果でもあった。

『THE FIRST SLAM DUNK』は、中国のZ世代が一番集まるSNSアプリQQにあるメタバース空間「スーパーQQショー」でチケットを販売した。ここに期間限定の映画宣伝部屋をつくり、予告編を流してZ世代ユーザー向けに発信。簡単にチケットを買える設定だ。

このメタバース上の宣伝に携わった80後の開発スタッフは「自分の青春をZ世代にも伝えられるとは夢にも思わなかった」と話す。

実は原作者である井上雄彦氏個人に関する中国語の報道は少なく、ファンの中ではミステリアスな「神」と捉えられている。ただ、90年代にテレビアニメが社会現象になってから、 30年近くたった今また映画が社会現象になる作品はスラムダンクしかない。作品の舞台になった江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅近くの踏切には、今も中国からの観光客が絶えず訪れる。こんな作品もスラムダンクのほかにはない。

井上雄彦
Takehiko Inoue
●漫画家

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、一時150円台 米経済堅調

ワールド

イスラエル、ガザ人道財団へ3000万ドル拠出で合意

ワールド

パレスチナ国家承認は「2国家解決」協議の最終段階=

ワールド

トランプ氏、製薬17社に書簡 処方薬価格引き下げへ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中