最新記事
アフリカ

西アフリカ諸国、ニジェール情勢巡り加盟国に待機部隊の発動要請「全ての選択肢排除せず」

2023年8月11日(金)11時43分
ロイター
西アフリカ諸国経済共同体の緊急首脳会議の参加者たち

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は10日、緊急首脳会議を開催し、クーデターが起きたニジェール情勢について協議した。ECOWASの議長国を務めるナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は会議後、「最終手段としての武力行使を含め、いかなる選択肢も排除されていない」と言明した。写真は8月10日、ナイジェリアの首都アブジャで開かれた西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の緊急首脳会議(2023年 ロイター/Abraham Achirga)

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は10日、クーデターが起きたニジェール情勢について協議するために緊急首脳会議を開催し、政権を奪取した軍事政権に対抗するため、加盟国に対し待機部隊の発動を要請した。民主主義の平和的な回復を望むとしながらも、武力行使を含むあらゆる選択肢を排除しないとしている。

緊急首脳会議はECOWASの本部があるナイジェリアの首都アブジャで開催。クーデターで追放されたニジェールのバズム大統領の復帰を阻止する勢力に対し、渡航禁止や資産凍結などの制裁措置を実施することで合意した。

 
 
 
 

ECOWASの議長国を務めるナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は会議後「最終手段としての武力行使を含め、いかなる選択肢も排除されていない」と言明。同時に「われわれの総力を結集し、ニジェールの安定と民主主義を回復させるために平和的解決をもたらすことができることを願っている。まだ全てが失われたわけではない」と述べた。

会議後に発表された共同声明には、ECOWASの国防責任者に「全ての要素を備えた待機部隊軍を直ちに発足させる」よう求める文言が含まれている。これとは別に採択された決議では、ニジェールの憲法秩序を回復するためにECOWASの待機部隊を派遣し、その後に平和的手段によって秩序を回復すると言及した。

ただ、部隊の資金源のほか、参加国、部隊の規模や装備などついては明記していない。

一部の安全保障問題の専門家は、地域部隊の編成には少なくとも数週間かかる可能性があり、ニジェールも問題の解決に向け交渉の余地が残されている可能性があると指摘している。

ただ、コンサルタント会社のストラテジック・スタビリゼーション・アドバイザーズのディレクター、アネリーズ・バーナード氏は「日程やレッドライン(越えてはならない一線)のほか、不測の事態が発生した際の対応など、合意されていない事項が多く残されている」と指摘。不透明な部分は多いものの、今回のECOWASの今回の声明は重要なステップで、ニジェール軍事政権とECOWASとの間の緊張の高まりにつながる恐れがあるとの見方を示した。

ニジェールはウラン生産国であると同時に、サハラ砂漠南部のサヘル地域におけるイスラム過激派との戦いで西側諸国の重要な同盟国だった。ニジェール周辺ではまだ具体的ではないものの、軍事侵攻を巡る懸念で緊張が一段と高まると予想されている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米首都近郊で起きた1月の空中衝突事故、連邦政府が責

ワールド

南アCPI、11月は前年比+3.5%に鈍化 来年の

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中