最新記事
日本社会

この30年で大きく減少した40代男性の年収額

2023年7月26日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
年収ダウン

男性就業者の年収は概して横ばいだが40代男性の減少値は突出している Andril Yalanskyi-iStock

<学校卒業が就職氷河期と重なったロスジェネの苦悩は、40代になった今も続いている>

2022年の総務省『就業構造基本調査』の結果が公表された。国内の全労働者の収入分布を知れる貴重な資料だ。厚労省『賃金構造基本統計』や国税庁『民間給与実態調査』は、一定規模以上の会社の雇用労働者に限定されるが、『就業構造基本調査』は自営等も含む全労働者をカバーしている。

2022年調査で年収が分かる労働者は6489万人ほどで、分布から中央値(median)を計算すると301万円となる。30年前の1992年の300万円と変わっていない。物価が上がり、諸々の税負担が増しているにもかかわらず収入は同じまま。それだけ国民の暮らしは苦しくなっている。これは肌感覚でも分かることだ。

上記は老若男女をひっくるめた全労働者のデータだが、次にみるべきは性別や年齢層別の数値だ。とくに働き盛りの層の動向が注目される。<表1>は、25~54歳の層を5歳刻みに分けて年収の中央値を出したものだ。1992年と2022年の数値を並べ、30年間の変化が分かるようにした。

data230726-chart01.png

男女の全年齢(15歳以上)の中央値を見ると、男性は30年間で変化なしだが、女性は167万円から208万円へと上がっている。未婚で働き続ける人が増えているためだろうが、男性との差は未だに大きい。

年齢層別に見ると、女性では全ての層で年収が上がっている。しかし、男性は傾向が定かでない。20代後半では50万円上がっている。昨今の人手不足もあり、若い人に定着してもらおうと待遇の改善をしている企業が増えているためかもしれない。

最も注目すべきは男性の40代で、この層では稼ぎが明らかに目減りしている(赤字)。学校卒業時が就職氷河期と重なった、いわゆるロスジェネがこのステージに達しているためだろう。新卒至上主義が強い日本では、卒業後からの挽回が難しく、不安定な状態に留め置かれた人が多い世代だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪首相、AUKUS前進に自信 英首相発言受け

ビジネス

日米関税交渉は延長戦、「認識なお一致せず」と石破首

ワールド

トランプ氏、イランとの核合意なお目指している=国防

ワールド

米財務長官との為替協議、具体的日程「決まっていない
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染みだが、彼らは代わりにどの絵文字を使っている?
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 8
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 9
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中