最新記事
ロシア

ワグネル・プリゴジンの乱で急浮上「ロシアの核兵器管理は大丈夫なのか?」

2023年6月26日(月)17時05分
ロイター
戦車に乗ったワグネル部隊の兵士

ロシア民間軍事会社ワグネルが武装反乱を起こし、一時モスクワに進軍を開始したことで、米政府内には昔の恐怖がよみがえった。写真は同日、ロシア南部ロストフナドヌーから撤収するワグネル部隊(2023年 ロイター/Alexander Ermochenko)

ロシア民間軍事会社ワグネルが武装反乱を起こし、一時モスクワに進軍を開始したことで、米政府内には昔の恐怖がよみがえった。それはロシア国内が大混乱に陥った際、保有されている核兵器がどうなってしまうかという問題だ。

今回はワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏が部隊に対し、駐屯地への撤退を命令したため、大規模な内戦に発展するのではないかとの心配はとりあえず払しょくされた。しかし、一連の騒動からは、プーチン大統領の権力基盤が弱まっている様子がうかがえる。

ロシアの路上を戦車が行き交う映像で思い出されるのは、1991年のソ連時代に共産党強硬派が起こしたクーデター未遂事件だ。当時、懸念されたのが「ソ連の核兵器が果たして安全に保たれているのか」「悪意を抱く軍の指揮官が弾頭を盗み出すのではないか」という点だった、と複数の元米情報当局者は話す。

元米中央情報局(CIA)高官で欧州とユーラシアの極秘活動を監督していたマーク・ポリメロプロス氏は「情報機関の世界では(ロシアによる)核兵器の備蓄にとてつもない注目が集まるだろう」と述べた。

別の元CIA高官でモスクワ駐在部門のトップだったダニエル・ホフマン氏は「核兵器を誰が管理しているのか知りたい。テロリストや(チェチェン共和国首長のラムザン)カディロフ氏のような悪漢が背後にいて、利用しようとするかもしれないとの不安があるからだ」と解説した。

カディロフ氏は、ワグネルが掌握した後に放棄したロストフの軍事施設に向けてチェチェンの部隊を派遣し、反乱鎮圧を支援する構えを見せている。

ロシアの戦略核および戦術核の保管問題を巡る差し迫った脅威が、なくなったことは間違いない。ロシア大統領府のペスコフ報道官も、ワグネルの撤退を促した政治的な取引は、混乱と流血を避けるのが狙いだったと述べた。

米国家安全保障会議(NSC)の広報担当者は、ロイターからの問い合わせに対して「ロシアの核戦力部隊の配置に変化は見られない。ロシアは核戦力を適切に指揮、管理、保管し、戦略的な安定性を損なう行動を絶対にしないという特別な責任を負っている」と回答している。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

情報BOX:米大統領選討論会、ハリス氏の「煽り作戦

ビジネス

ウニクレディト、コメルツ銀買収観測再燃 独政府から

ワールド

アングル:自民総裁選、市場は「岸田路線」の継続性を

ワールド

焦点:米大統領選討論会、踏み込んだ政策論争不在 市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 2
    クルスク州「重要な補給路」がHIMARASのターゲットに...ロシアの浮橋が「跡形もなく」破壊される瞬間
  • 3
    非喫煙者も「喫煙所が足りない」と思っていた──喫煙所不足が招く「マナー違反」
  • 4
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンシ…
  • 5
    運河に浮かぶのは「人間の手」? 通報を受けた警官…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 8
    川底から発見された「エイリアンの頭」の謎...ネット…
  • 9
    「生後45日までの子犬、宅配便で配送します」 韓国ペ…
  • 10
    米大統領選でトランプ・バンス陣営を襲う「ソファで…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 6
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 7
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 8
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 9
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 10
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中