最新記事
キャリア

先天性の四肢欠損の少年がパイロットになる夢を叶えた本当の話...「頑固さ」と「温かさ」を支えに

Flying With No Hands or Feet

2023年6月22日(木)17時05分
ザカリー・アングリン(パイロット)
ザカリー・アングリン

時には頑固になることが自分の役に立つこともあるとアングリンは言う ZACHARY ANGLIN

<子供の頃から空を飛ぶことを夢見ていた生まれつき手足のない少年が、世界で初めて事業用操縦士の資格を手にするまで>

私は先天性の四肢欠損だ。生まれつき手と足がない。しかも養子で、きょうだいが18人もいる。母親は児童養護施設を運営しており、私自身はナイジェリア人。成長の過程で、私は環境に素早く適応することを学んでいた。

育ったのは米ウィスコンシン州。母の話では、私は8歳くらいになるまで自分に手足がないことに気付いていなかったようだ。きょうだいと張り合って木登りやスケートボードをしたり、トランポリンで跳びはねたり、ピザの最後の一ピースを取り合ったりしていたという。

パイロットになることは、ずっと夢だった。子供の頃、父に連れて行ってもらったミネアポリスの空港で、大きな飛行機が離着陸するのを眺めながら「僕も飛行機を操縦するんだ!」と思った。

高校の卒業が近づいた頃、パイロット志望であることを周囲に伝えた。すると、みんなが言った。「ザック、君の状態から考えると、それはちょっと難しい。もう少し安全な道を行こう」

学校の進路カウンセラーには法律家になることを勧められたが、私はノーと言った。私は時に頑固になる。それが時には自分のためになることもあるようだ。

2017年には航空学校5校に応募し、そのうち1校から合格通知をもらった。うれしさと感動で胸が震えた。

夢はかなったが、航空学校で数々の困難にぶつかることになる。米連邦航空局(FAA)の資格試験では、四肢欠損のため身体検査で5回はねられた。ここで持ち前の頑固さが役に立った。

私はFAAに電話をかけ続けた。1日に何百本もの電話を受ける係の人から、こちらが名乗る前に「またザックでしょ」と言われる始末だった。

操縦席でぶつかった困難

しつこく電話をかけ続けた結果、「SODA」の試験を受けられることになった。これは身体に障害があってもパイロットの訓練を受ける能力があることを証明する制度だ。

私の場合、SODAを取得するためには、まず3時間の訓練を受ける。さらに医学的に問題がないことを証明するため、FAAが指定したパイロットと一緒に空を飛ばなくてはならない。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

ウクライナ提案のクリスマス停戦、和平合意成立次第=

ビジネス

EUの炭素国境調整措置、自動車部品や冷蔵庫などに拡

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中