最新記事
ロシア

ロシア、国家の求める「歴史認識」を強化 民主派拠点の人権センター、反体制派スパイとして閉鎖へ

2023年4月30日(日)19時43分
ロイター

「記憶は国のもの」

がらんどうになった展示室の椅子に座りながら、バフミンさんはロシア政権について、歴史に対する異なる解釈が、政権側の主張する「物語」を揺るがすことを恐れていたと指摘した。この部屋は以前、スターリンによる大粛清の被害者に関連する品で埋めつくされていた。

「いまや記憶の占有が行われている。国家によって独占されているのだ」とバフミンさんは語る。

「政府の占有や態度にそぐわないものは全て、敵意があり不必要だと見なされる」

ロシア政府がウクライナでの「特別軍事作戦」と呼ぶ侵攻に対し、同センターは反対を公然と表明している。昨年3月に公表した声明で、ロシア社会は「隣国で死や破壊、深刻な苦痛を引き起こす恐ろしい危機の渦」に身を任せ、飲み込まれることを容認してしまったと批判した。

声明は「あからさまな抗議の姿勢はもちろん、何が起きているかを伝える正しい言葉さえ、自動的に抑圧の対象になってしまった」と指摘した。

ロシア政府は昨年2月、ウクライナに軍を派遣した直後に、大々的な「検閲法」を導入。軍の信用を落とす行為に対する禁錮刑の刑期を延長するなど、厳罰化を進めた。

サハロフセンターは12月、「外国代理人」に関する法律に違反したとして500万ルーブル(約816万円)の罰金を科された。

さらには1月、米国を拠点とするアンドレイ・サハロフ財団が「好ましくない団体」に指定された。これは「外国代理人」よりも重罪に問われる可能性のある分類だ。

サハロフセンターの活動は今後、オンライン上だけに制限され、所蔵されていた書籍や資料はモスクワ中のアパートに分散して保管されることになるだろうとバフミンさんは言う。

同組織は完全に閉鎖されたわけではない。だが、バフミンさんは取材時点で、ロシア司法省の「現場調査」が4月28日まで続くと話した。

もしこの状況にサハロフ氏がいたらどうしていただろうかとバフミンさんに尋ねると、サハロフ氏は常に弾圧に抵抗してきたと答えた。

「サハロフ氏は、いま起きていることを断固として受け入れないだろう。彼がどんな行動を取ったか、それは分からない」

Andrew Osborn [ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUのロシア産原油輸入停止法制化案、ハンガリー議会

ワールド

トランプ氏、一般教書演説で「強く繁栄する米国」強調

ワールド

米政府、インドなどアジア3カ国の太陽光製品に暫定的

ワールド

国連総会、ウクライナ支持決議を採択 米は「交渉の妨
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中