最新記事

中台関係

米台の指導者が会えば会うほど、中国の「派手なリハーサル」が止まらない

More Saber-Rattling

2023年4月17日(月)11時56分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)

しかし通常は、付近を飛行する航空機に対する警告は6時間単位で設定される。だから名目上は「27分」でも、実質的には6時間の飛行禁止だった。

この飛行禁止空域設定はルール違反だと反発する専門家もいたが、台湾政府は後に、これは軍事活動に関連したものではなく、中国による気象観測衛星打ち上げに伴う措置だとして理解を示した。

フランスの軍艦も牽制

一連の軍事演習は台湾に心理的な圧力をかけ、その庇護者であるアメリカに中国軍の実力を見せつけるためのものだが、別な目的もありそうだ。現場の兵士たちに、海上封鎖や軍事侵攻の実地訓練の機会を提供するという目的だ。

もしもそうなら、台湾の指導者がアメリカの要人と会えば会うほど、中国側は台湾侵攻や海上封鎖のリハーサルを重ねられることになる。台湾側にとっては好ましくない展開だろう。

米台の対話を口実に軍事演習が繰り返されるのだとすれば、蔡とマッカーシーの間で行われたような会談が今後も開かれるかどうかは不透明になる。

中国に軍事演習を行う口実を与えないために、台湾とアメリカが接触を控えるという選択肢もある。引き下がれば弱腰に見えると考えて、今後も同様の交流を続ける可能性もある。

一方で、諸外国が中国の行動にどう対応するかも注視していく必要がある。今回の演習中、アメリカは原子力空母「ニミッツ」を中心とする空母打撃群を中国周辺に派遣して、中国を牽制した。

さらにアメリカとフィリピンは、4月11日からこれまでで最大規模の合同軍事演習を実施している。この演習には1万7600人以上が参加した。ただし中国軍の動きに対抗するものではなく、以前から予定されていた通常の演習だとされている。

ちなみに、中国の演習中にはフランスの軍艦も台湾海峡を通過し、中国を牽制している。

その直前に訪中したフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ヨーロッパが米中の対立に巻き込まれてはいけないと示唆するような発言で物議を醸したばかりだが、さて真意はどこにあるのか。

From thediplomat.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独首相、企業にウクライナ再建支援呼びかけ ベルリン

ワールド

骨太方針、構造的賃上げが鍵 首相「新たなステージに

ワールド

停戦巡る安保理決議、ハマス幹部が受け入れ表明 希望

ビジネス

アングル:中国EV対応に悩む欧州、関税検討の一方で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬で決着 「圧倒的勝者」はどっち?

  • 4

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 5

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 6

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 7

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕…

  • 8

    「私の心の王」...ヨルダン・ラーニア王妃が最愛の夫…

  • 9

    イスラエルに根付く「被害者意識」は、なぜ国際社会…

  • 10

    高さ27mの断崖から身一つでダイブ 「命知らずの超人…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 7

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 8

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中