最新記事

中台関係

米台の指導者が会えば会うほど、中国の「派手なリハーサル」が止まらない

More Saber-Rattling

2023年4月17日(月)11時56分
ブライアン・ヒュー(ジャーナリスト)

そのほうが人的損害は少なくて済む。また露骨な武力行使を伴わない「グレーゾーン戦術」や、台湾海峡に浮かぶ馬祖島の制圧といった選択肢も考慮されている。

台湾の対岸にある福建省の海事局は、今回の演習中に付近を航行する船舶があれば立ち入り調査を実施すると警告していた。

事実上の海上封鎖である。中国側としては今回の演習で、いつでも台湾を封鎖できるという実力を見せつけたかったのだろう。

これに対して台湾側は、あたかも中国が台湾海峡を実効支配しているかのような虚構を演出する行為だと非難し、台湾の軍事力では中国に対抗できないと印象付けるための工作だと反発した。

今回の演習でもう1つ注目すべきは、台湾と中国の軍がそれぞれ、SNSで連日のように動画を公開したことだ。

中国が戦闘機や軍艦、ミサイル輸送車両などの動画を公開すれば、台湾側も自軍の部隊が中国側の動向を監視している様子を捉えた動画を公開して対抗した。

おそらく互いの軍事力や監視能力を誇示するために動画を公開したのだろう。中国側は、わざと台湾軍の艦艇が映り込む場所で撮影を行うなど、インターネット上での公開を意識した「演出」もやっていたとみられる。

演習中に台湾軍と中国軍の艦艇がにらみ合いになる場面も数多く見られた。台湾海峡の中間線付近で両軍の艦艇10隻ずつがにらみ合ったとも報じられた。

演習が終わった後も、(演習中に比べれば戦闘機や軍艦の数が減ったとはいえ)中国軍による領空侵犯などが毎日のように続いた。また福州や大連、海南では週末にかけて、中国軍による別な実弾演習も行われた。

中国政府はさらに、4月16~18日にかけて台湾北方に飛行禁止空域を設けると発表。また台湾が実施している中国の農産品など2400超の品目の輸入制限について調査を行うとも通告した。

その後、台湾交通部の抗議を受けて、飛行禁止空域の設定期間は16~18日の午前9時~午後2時の予定から、16日午前の9時30~57分の27分間のみに短縮された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本郵政、アフラックを持ち分法適用会社に

ワールド

スロバキア首相銃撃で負傷、生命の危機脱する 「政治

ビジネス

バーナンキ氏、英中銀に金利予測公表に関する議論促す

ワールド

ウクライナ和平サミット、50カ国以上が参加表明=開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中