最新記事

中台関係

「台湾有事」で沖縄をも揺さぶる中国だが、逆に日米を団結させるだけ

2023年4月10日(月)12時51分
A・A・バスティアン (ワシントン在住の歴史作家)

中国は既に南西諸島のすぐ西にある釣魚島(日本名:尖閣諸島)の領有権を主張しているが、それ以上の領土的野心もちらつかせている。

ただし、台湾との戦争と日米との戦争は別物だ。中国の目的の1つは、日米両国を戦闘に参加させないための威嚇なのかもしれない。

だが中国への不信感を募らせている日本では反発をあおる可能性のほうが高い。

アメリカの占領をきっかけに生まれた日米同盟は必ずしも日本国民に支持されてきたわけではないが、中国の直接的な軍事的脅威は、数十年間続いてきた日米共同防衛のアプローチへの信頼を強めている。

こうして沖縄の重要性は高まったが、同時に米軍の駐留に反発し、日本政府に無視されていると感じる沖縄の人々は不本意なコストを背負わされている。米軍機の騒音や米兵の犯罪、そして広大な米軍基地の存在は地元民を怒らせている。

沖縄の戦略的価値を考えると、この島は大国間の綱引きの道具になる運命なのかもしれない。中国の一部には琉球王国と清の朝貢関係を根拠に、中国政府が領有権を主張する可能性を指摘する向きもある。

だが、中国の野望は裏目に出るかもしれない。米軍が駐留する沖縄には多くのアメリカ人がいる。

80年近い関係を経て、なかには沖縄と日本に深い愛情が芽生えた人々もいる。沖縄への威嚇は、日米両国の行動を抑止するのではなく、むしろ刺激する可能性が高い。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中