最新記事
米右派

ダビデ像はどうしてポルノじゃないの?

Florida principal's ousting over David statue causes stir in Italy

2023年3月28日(火)19時53分
ハレダ・ラーマン

ポルノか芸術か(ダビデ像) Marta Pons Moreta-Shutterstock

<米フロリダ州で、ルネサンス彫刻の傑作「ダビデ像」の写真を小学生に見せた校長がクビになった。「ポルノ」を見せたと抗議があったからだ。母国イタリアは「あまりにも無知」とカンカンだ>

米フロリダ州の小学校の校長が、授業でイタリア・ルネサンスの巨匠ミケランジェロの彫刻「ダビデ像」の写真を見せたために辞職に追い込まれた。本家イタリアでは驚きと怒りの声が上がっている。

タラハシー・クラシカル学校のホープ・カラスキーヤ校長は、6年生向けの授業で生徒にダビデ像の写真を見せたところ、3人の保護者から苦情を受け、3月23日に辞職に追い込まれた。保護者の1人は、ダビデ像を「ポルノ」だと訴えたという。

このニュースを知ったイタリア・フィレンツェのダリオ・ナルデッラ市長は、「アートとポルノを混同するなんて馬鹿げている」とツイート。「アートは文明であり、それを教える者は誰であれ敬意をもって扱われるべきだ」

騒動はイタリアの日刊紙「コリエレ・デラ・セラ」でも報じられた。AP通信によれば、同紙は一面に、ダビデ像の性器を米市民の顔で隠して「恥」という言葉を添えた風刺画を掲載した。

ダビデ像が収蔵されているアカデミア美術館のセシリエ・ホルバーグ館長はAP通信に対して、「ダビデ像をポルノと考えるのは、聖書の内容や西洋文化、ルネサンス美術に対する理解が欠如しているということだ」と語った。彼女はダビデ像の「純潔さ」を見てもらうために、カラスキーヤや同学校の理事会、保護者や生徒を同美術館に招待したという。本誌はホルバーグにメールでコメントを求めたが、本記事の発行までに返答はなかった。

イタリアの極右vsアメリカの保守

イタリア側の反発は、アメリカの「文化戦争」が海外でどう受け止められているかを浮き彫りにしている。イタリアのジョルジャ・メローニ首相が率いる極右政党は、アメリカのキャンセル・カルチャー(公正さや多様性を求めて従来の文化や伝統を否定する動き)に対抗する手段の一環として、イタリアの歴史的な遺産を傷つける者を取り締まると宣言している。

一方のフロリダ州は、学校のカリキュラムにうるさいことで知られている。同州のロン・デサンティス知事(共和党)は2022年、小学校で性自認や性的指向を議論することを禁じる法律に署名。さらに幼稚園から高校3年生までの授業で、人種差別は制度的にアメリカ社会に組み込まれているとする「批判的人種理論」を教えることを禁止する法律も成立させた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中