最新記事
北朝鮮

北朝鮮、金正恩のそばに立つ謎の「モザイク男」は誰なのか?

2023年3月20日(月)20時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ミサイル発射を見守る金正恩と北朝鮮の軍幹部

弾道ミサイル発射を見守る金正恩のそばには、謎の「モザイク男」が…… YTN / YouTube

<弾道ミサイル発射の影で、ある男の存在が注目されている──>

米韓合同軍事演習への対抗として19日に弾道ミサイルを発射した北朝鮮。その様子を伝える記事が労働新聞に掲載されたが、現場の写真に登場した謎の「モザイク男」の正体に注目が集まっている。アジア経済、YTNなどの韓国メディアが報じた。

20日の労働新聞は、18・19日の2日間「戦術核運用部隊の核反撃仮想総合戦術訓練」を実施したと伝えた。19日午前、日本海に向けて発射した短距離弾道ミサイルについても「敵(韓国)の主な対象に核攻撃を模した戦術弾道ミサイルを発射する訓練」だったと説明し、金正恩国務委員長らが発射を見守っている写真を公開した。

写真を見ると、金委員長のそばに娘のジュエとともに軍の主要幹部と思われる4人が並んでいる。そのなかで、目を引くのが一番右に立つ軍服姿の謎の男だ。ミサイル発射を見守っているのに、ただ一人でマスクにサングラスを付けたうえ、異例なのはモザイク処理の加工まで行われていることだ。

北朝鮮の主要メディアが公式行事への参加者の顔をこれほどまでに隠すことはほとんどない。モザイク処理を使用するのは、海外のスポーツ競技を中継するときに欧米企業の広告を隠すか、あるいは粛清された人物の映った画像を編集するときに限られている。

「モザイク男」の正体は?

それでは「モザイク男」は何者なのか? 労働新聞の報道内容から推察すると「モザイク男」は、核またはミサイルの開発に関連した重要人物とみられる。今回の演習にはカン・スンナム国防相と戦術核運用部隊を総指揮する連合部隊長、ミサイル軍部隊長、党中央委員会の幹部たち、ミサイル総局指揮官ら核兵器研究所の関係者などが参観したという。

一部ではモザイク処理された「モザイク男」は「戦術核運用部隊を総指揮する連合部隊長」か、「ミサイル総局の総局長」の可能性があるという観測も出ている。彼の着ている軍服の肩章が、北朝鮮で軍団長級指揮官に任命される中将階級と推定されるという点もこのような可能性を裏付けている。

梁茂進(ヤン・ムジン)北韓大学院大学総長は「(労働新聞の報道で)言及された主要部隊指揮官や核兵器関連の実務者、あるいはキム・ジュエのボディガードの可能性がある」「北朝鮮がセキュリティを維持し、この人物が欧米側の制裁対象になることを防ぐため、正体を隠したと見られる」と分析した。

ク・ビョンサム韓国統一部報道官は20日、政府ソウル庁舎で開かれた定例記者会見で「写真ではこの人物を識別しにくい。関係機関等と分析していくことにする」と話すにとどめた。

一方で、統一部は、北朝鮮が3月18・19日に「戦術核運用部隊の核反撃仮想総合戦術訓練」を実施し、韓国側を狙った核の脅威を高めたことに対して強い遺憾の意を示した。

統一部当局者は「我が国の定例防衛訓練について、北朝鮮が「侵略的な戦争練習」だと罵倒し、核兵器を取りだして脅かすことに対して極めて遺憾に思う。朝鮮半島の危機を生み出した原因と責任は北朝鮮の無謀な核開発にあることをもう一度明らかにする」と繰り返し強調した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ

ワールド

スーダン、人道危機リストで3年連続ワースト1位 内

ワールド

スマトラ島洪水、活動正常化には数カ月=プラボウォ大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中