最新記事

アメリカ政治

来年の米大統領選、共和党内はウクライナ戦争への関与が争点に

2023年3月16日(木)12時17分
トランプ前大統領とデサンティス氏

2024年米大統領選で、野党共和党の指名候補争いはウクライナ戦への関与に否定的な「孤立主義派」と、ウクライナ支援に前向きな「タカ派」の違いが鮮明。先頭を走るトランプ前大統領(写真左)と、まだ正式な出馬表明をしていないデサンティス氏(右)は孤立主義派だ。2022年11月、オハイオ州とフロリダ州で撮影(2023年 ロイター/Gaelen Morse, Marco Bello)

2024年米大統領選で野党共和党からの出馬が取り沙汰される南部フロリダ州のロン・デサンティス知事が、ウクライナ戦争への関与は米国にとって重要な国益ではないとの認識を示した。これにより、共和党の大統領選指名候補獲得争いは、ウクライナ支援の是非を巡る外交政策が争点になるとの見方が専門家の間で広まっている。

共和党の指名候補争いはウクライナ戦への関与に否定的な「孤立主義派」と、ウクライナ支援に前向きな「タカ派」の違いが鮮明。その勝敗結果が、共和党の今後数年間の外交政策を左右する可能性がある。

トランプ前大統領や、まだ正式な出馬表明をしていないデサンティス氏は孤立主義派。両氏が指名候補争いで先頭を走っているのは明白で、2人とも米国がウクライナやその同盟国を支援するのは資源の無駄遣いだと断じ、指導者たちは自国の問題にもっと注意を払うべきだと訴えている。

一方、ニッキー・ヘイリー元国連大使やマイク・ペンス前副大統領などはタカ派。ウクライナの断固たる擁護者を名乗り、ロシアや中国など米国と敵対する国に対峙(たいじ)する姿勢を示している。

ロイター/イプソスの世論調査によると、共和党員の有権者は、米国がウクライナを支援すべきか、米国が世界とどのように関わっていくべきかで意見が割れている。

共和党はかつて外交政策でタカ派的な立場を取っていたが、諸外国とのかかわりや同盟国への軍事支援に冷淡な姿勢を強め、とりわけ2016年にトランプ氏の大統領就任以降、そうした傾向に拍車が掛かった。

共和党のタカ派的な外交政策を背景に米国は20年前、イラク戦争やアフガニスタン戦争に関与した。しかし保守系テレビ司会者タッカー・カールソン氏が13日に、共和党の候補者や立候補の可能性のある人物を対象に実施したウクライナ戦争に関する質問の回答を公開すると、共和党の外交政策の基本姿勢の転換ぶりがあらわになった。

デサンティス氏はこのアンケートで「米国には多くの重要な国益があるが、(中略)ウクライナとロシアの領土紛争にこれ以上巻き込まれることは、その1つではない」と回答した。

これに対して他の共和党候補が即座に反論した。

ヘイリー氏は14日の声明でウクライナへの支持を改めて表明。「米国にとってウクライナの勝利ははるかに良いことだ」と述べた。

いずれも大統領候補指名争いをしたことがあるフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員、リンゼー・グラム上院議員も共和党内の孤立主義を批判。グラム氏はロシアのプーチン大統領について「遅かれ早かれ代償を支払うことになる」とツイッターに投稿した。

シンクタンクのアトランティック・カウンシルに籍を置く元外交官のダン・フリード氏は「デサンティス氏のコメントは、第二次世界大戦前の共和党の伝統的な立場である孤立主義、つまり欧州の安全保障に対する無関心を極めてほうふつとさせる」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に

ワールド

イスラエル、ガザ全域で攻撃激化 米は飢餓リスクを警

ワールド

英、2030年までに国防費GDP比2.5%達成=首

ワールド

米、ウクライナに10億ドルの追加支援 緊急予算案成
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中