最新記事
中国

水増しされていた中国の人口、「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出

Falsified Population

2023年3月15日(水)15時29分
練乙錚(リアン・イーゼン、香港出身の経済学者・コラムニスト)

230321p42_CGK_02.jpg

中国共産党第1次全国代表大会の会場跡にある記念館で習近平の映像に見入る中学生たち(上海市) ALY SONGーREUTERS

江沢民も胡錦濤も、中国経済の成長を支えるには外国資本の誘致が不可欠と考えていた。だから中国には今でも10億人を超える巨大市場があり、その規模は何十年も先まで拡大を続けるし、安価な労働力もたっぷりあるという「神話」をつくり上げた。

データの改ざんは習近平(シー・チンピン)体制になってからも続いた。「14億の民」という標語を振りかざせば、軍事面でも外交面でも虚勢を張り、諸外国を威圧することが可能だった。

しかし偽りの楽観的な人口統計に基づく経済成長は持続不能だ。だから習近平は、あの「ゼロコロナ政策」を放棄したときと同様、唐突に「30年以降の人口減少」説を放棄した。そして中国の人口は既にピークに達し、減少に転じていると認めた。

それでも中国は、全てを白状したわけではない。22年の人口総数は約14億1000万人だったと、今も主張し続けているが、ここ数年の人口データの修正から考えて、極めて疑わしい数字だ。

なお米ウィスコンシン大学の人口統計学者である易富賢(イー・フーシェン)は、水増しされる前の出生データを基に、中国のピーク人口は約12億8000万人だったと推定している(ちなみに彼の著書は、中国国内では発売を禁じられている)。

だが昨年起きたハッキング事件により、中国の人口は彼の推定値よりもずっと少ない可能性が出てきた。

データ流出で嘘が露呈?

昨年6月、中国は史上最悪のデータ流出事件に見舞われた。上海警察のデータベースがハッカー攻撃を受けたのだ。

ハッカー集団は、個人を特定できる最新の情報を含む10億人分(23テラバイト相当)のデータセットを盗み、それをダークウェブで1セット10ビットコイン(約20万ドル)で売りに出した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

26年度の超長期国債17年ぶり水準に減額、10年債

ワールド

フランス、米を非難 ブルトン元欧州委員へのビザ発給

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡・20人負傷 ガ

ワールド

英BP、カストロール株式65%を投資会社に売却へ 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中